ご挨拶 新たなステージでの新たな役割を目指して

 平成11年に内閣に設置された司法制度改革審議会によって幕開けとなった平成司法改革は,最大の改革内容といわれる裁判員裁判が平成21年5月から実施されています(第1号事件は8月)。その他にも,拡大被疑者国選制度や検察審査会の権限強化も実施され,平成司法改革の枠組みづくりとその実施は,平成21年において,一段落ついたと評価できるでしょう。この10年の間で,日本裁判官ネットワークが目指してきた「開かれた司法の推進と司法機能の充実強化」については,飛躍的に事態が進み,「司法と国民の距離感」や「社会の中における司法の役割」が確実に変わってきたといえるのではないでしょうか。

 日本裁判官ネットワークも,平成11年9月,東京法曹会館で産声を上げてから,10年が経過しました。この間,シンポジウムや模擬裁判,市民講座等の企画をすると共に,当ホームページやブログ(http://blog.goo.ne.jp/j-j-n/)を通じて,公の窓口とはひと味違った「もう一つの窓口」として様々な情報発信をし,かつ裁判官制度についての節目には,最高裁に意見書を提出などしてきました。もちろん,内部でも,日常的な事柄を含めて,司法の問題について議論を重ねてきたところです。これら10年間の活動内容は,平成司法改革の推進に一定の役割を果たしてきたと自負しています。そして,その内容を振り返ることも含めて,平成21年11月,「J−NETのこれまでの10年とこれからの10年」と題する企画を成功させ,一段落ついたところです。その内容は,当ホームページの「オピニオン」欄に,「10周年記念企画」として掲載しています。

 このように,平成司法改革も,日本裁判官ネットワークも,10年が経過し,一段落ついたのですが,進められてきた改革については,別の動きも大きくなってきています。その中で最大のものは,司法試験合格者について,平成司法改革の内容をなす平成22年度の3000人合格計画が達成困難になったことで,併せて,増え続ける法曹人口に対する不満が,中堅の弁護士を中心に大きくなったことが挙げられます。一方で,政権交代を始めとして,社会の変化にも大きなものがあります。混沌とした時代になってきたともいえますが,今後どのような流れになろうとも,また従来の改革の手直しが必要になる場面があろうとも,日本裁判官ネットワークが目標としてきた「開かれた司法の推進と司法機能の充実強化」は,大筋において正しいものであり,今後も引き続き目標としていくべきものと考えています。その意味で,10年間の司法改革で成し遂げられなかった改革,達成が不十分であった改革については,「第二次司法改革」として,引き続き改革を提案していくことが重要であると考えています。その内容に何を盛り込むか,現在模索中ですが,日本裁判官ネットワークが,司法改革の新たなステージで,新たな役割を果たすべく,内容の濃いものにできればと考えています。

 皆様方の静かな応援を,心からお願い申し上げます。

平成22年4月
日本裁判官ネットワークコーディネーター一同