最高裁判所の竹崎博允(ひろのぶ)長官が、5月3日の憲法記念日を前に記者会見し、東日本大震災について、「復興の過程で生じるさまざまな法的問題に、迅速に対処できるよう努めたい」と述べ、マスコミで報道されました。
予想される紛争として、被災者のローンなど債務の弁済問題、企業の経営破綻に伴う労働問題、相続・財産管理など家族間の問題のほか、原発関連などが挙がったようで、今年の憲法記念日を前に、司法として大事な震災復興対応宣言になったのではないかと思います。6月に行われた裁判所のサミットである長官所長会同でも、裁判所の震災対策が議論のテーマの一つであったようで、最高裁長官の挨拶でも、重要課題として(http://www.courts.go.jp/about/topics/2306_2.html)取り上げられています。
5月位までの震災対応は、警察、消防、自衛隊などの方々の活動が中心で、司法関係者が職務上できることが限られていましたが、復興に向けて動き出す時期になると、被災者の方々の法的問題を解決するために、司法関係者ができることは多くなるのではないでしょうか。
その一環として、以前紹介したL方式(当ネットワークブログ1/29欄、当ネットHPのコーヒーブレイク欄でも紹介しています。)、又はL方式型調停を震災対応で用いることを検討してみてはどうかと思うのです。
1月21日発売の、判例時報2095号に、拙い論文ながら、このL方式の試行的実施のレポートを掲載していただきました。一般の民事事件の中の適切な事件を、付調停とし、調停委員会として、労働審判事件と同様、3回の審理で解決しようとしたものです。
今回の震災復興過程では、上記竹崎長官の記者会見の中でも触れられたように、さまざまな法的問題が生じることが予想されます。しかも、関係者の多くが、震災で、身体的、精神的、経済的に傷ついておられるので、こうした事態が生じていない通常の時と比べても、格段に迅速な紛争解決を望まれるのではないかと思うのです。精緻で正確な解決もさることながら、迅速で直ちに復興に役立つ解決をです。そのために、3回の期日で解決を図ろうという合意はできやすく、最後は17条決定という判断も受け入れやすいのではないかと思うのです。私の提案したL方式は、訴訟事案を付調停とするものですが、最初から調停事案で、3回で解決する合意をするL方式型調停でも十分運用できます。
実は、日本の調停は、震災と共に歩んできた面もあります。関東大震災の折には、借地借家調停が数多く使われました。阪神・淡路大震災の折にも、民事調停の手数料が不要となるなどの措置がとられました。それだけ、調停は、非常時に適合する面がありますから、今回の震災対応でも、民事調停を使ったL方式やL方式型調停を用いることは十分考えてもよいように思われます。
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