● L方式
 〜「英知の結晶」を民事紛争一般に生かしましょう。

浅見宣義(神戸地家裁伊丹支部)

 L方式とは、3回以内の期日での紛争解決を目指した労働審判制度を、一般の民事事件に取り入れるための民事紛争解決方式のことで、「LABOR  DISPUTE  DETERMINATION  PROCEDURE」(労働審判手続),3回以内の期日に制限されたことを示す「LIMITATION  AT  TRIAL  DATE」(審理期日の制限),及びこうした手続によって達成される簡易・迅速という価値から導かれる「LOW  COST」(低コスト)の各頭文字から,「L方式」といいます。

 平成23年1月21日発売の、判例時報2095号に、拙い論文ながら、このL方式の試行的実施のレポートを掲載していただきました。一般の民事事件の中の適切な事件を、付調停とし、調停委員会として、労働審判事件と同様、3回の審理で解決しようとしたところ、L方式合意後の審理期間(回数・日数)は,2.61回,92.9日であり,労働審判事件のそれに近づきました。訴訟の初期からL方式を適用するA類型というパターンだけをとりますと、審理期間(回数・日数)は、2.00回,73.2日で,労働審判事件を上回りました。上記の論文は、この成果だけでなく、基本構想や具体的手続、教訓などをまとめています。詳細は、上記判例時報でお読みいただけば幸いです。

 何故こんな方式に取り組んでみたかといいますと、私が前任地で労働審判を実際に担当してみて、この制度は本当に「英知の結晶」のように思えたからです。労働審判は、裁判所にある2つの紛争解決手続である民事訴訟と民事調停のいわば中間的なものなのですが、労働法学者、法律実務家、労使双方等の「英知」を集め、議論を重ねながら案を作り、制度ができてからも、関係者が協力して育てようとしてきましたので、とても制度として優れており、大変な成果を収めているのです。これを労働事件の分野だけにとどめておくのはもったいないように思えて、国民共有の財産にするには、民事事件一般に取り入れる必要があるように思えたのです。

 そんなL方式ですが、平成23年2月20日のシンポで、拙稿に書かなかったことも含めながら詳しく紹介したいと思います。当日は、このL方式の紹介だけでなく、高名な「ミスター集中審理」元裁判官、次期大阪弁護士会会長等による問題提起や報告もあり、話題満載です。学者、弁護士の方々、それに司法修習生や法科大学院の皆さん、中身の濃いシンポジウムになりそうです。是非ご参加下さい。