● 「わが不老長寿法」その7
岡山弁護士会弁護士 宮本敦(元岡山家庭裁判所判事)
元日本裁判官ネットワークメンバー,現サポーター 
 体重の減量がなかなか容易でないことは,すぐ太る体質の人で,減量に何度も失敗した人は十分過ぎるくらい判っているに違いない。しかし,減量は,本気(必死)になれば案外たやすいことなのだが,なかなか本気になれないということである。極端な減量はすぐにリバウンドするし,頑張り過ぎると減量は続かず,成功は難しい。米国では,減量のエステに通って,大幅減量に成功した人を追跡調査すると,5年後にはほぼ全員が減量前の体重に戻っていたという報告があるとのことである。

 病気で入院された先輩弁護士の仕事の応援のために,私が事務所を移転してから2か月が経過した平成17年2月末ころ,私は突然毎朝の起床時に吐き気に悩まされるようになった。血圧もかなり高くなっており,体重も増えて86キロになっていた。私の掛かり付けの医師である高校の友人に,血液検査や胃カメラを含めて一通り検査してもらったが,胃に発赤がある他格別な原因は見つからず,「逆流性胃炎」という診断を受けた。胃薬を飲み続けたが,その後約2か月間吐き気は続いた。2か月後,なお吐き気を訴える私に対し,その友人は,今度は造影剤なども使用して,CTスキャンなど本格的な検査をしたが,異常は見つからず,「おそらく神経性のもので,仕事に明け暮れているストレスが原因だと思う。少し気分転換が必要だろう。」と言った。もう何年も毎朝約30分犬の散歩を続けてきたが,思えばこの1年近く,テニスも水泳もろくにせず,特に応援態勢に入ったこの4か月間は,毎夜12時近くまで事務所で狂ったように仕事をしてきたし,土、日も仕事漬けであった。ストレスが溜まっていると言われれば,思い当たることだらけである。

 そこで発想を転換し,生活改善運動に取り組むことにした。仕事漬けの生活を改めて,毎日遊びの時間を優先確保することにしたのである。事務所は午後6時に事務員が帰宅するので,午後8時までの2時間をフリータイムとし,この時間は「仕事をしてはならない時間」であり,「健康のために愛する家族に対する義務として遊ぶ」ことにしたのである。持参した弁当(毎日2食自分で弁当を作っている。)で素早く夕食を済ませて,事務所で体操服に着替えて事務所を飛び出し,午後8時に事務所に帰って来るのである。自転車でプールに行き30分泳いだり,車で川原に行きコンクリートの水門で30分テニスの壁打ちをしたり,岡山後楽園の周囲をサイクリングしたり散歩をするなどのトレーニングをするのであるが,往復時間を考えると、午後8時から事務所で仕事を再開するのに程よい時間となる。気分もスッキリしているし,余り酒を飲みたいとも思わなくなった。こうして不思議なことに,あれほど悩まされた吐き気は1週間で消滅した。体重もドンドン減って1か月で3キロ痩せた。食事の量は少な目になっているが,夕方の空腹感が心地よい。これなら今後も平均月2キロは痩せることができそうだ。そして現に2か月で5キロ痩せた。皆さんから,「オッ!痩せたな。」とか,「急に痩せるとシワだらけの梅干じいさんになるよ。」などと言われるようになった。「どうだ!俺も男だろ。」などと内心粋がっていた。

 ところが,世の中はなかなか思うようには行かないもので,折角好調な減量軌道に乗ったと思ったのに,ふと気がつくと,またもや仕事に追われて仕事漬けの生活に戻って,遊びが中断していた。アッという間に3キロ太り,吐き気が再発した。

 これはいかん。自覚が足りなかったか。どんなことがあっても,フリータイムは仕事をしてはいけないことにしていたのに。

 そして,再びの挑戦が始まり,2週間が経過した。今のところ順調である。

 減量には,意欲的な心が必要である。減量の爽快感のために,飲酒したくないという心境になることが必要であり,可能である。一種の悟りの境地ともいうべきものであろうか。キッと今度は頑張れるだろう。無理して痩せようとするのではなく,フリータイムを楽しむことにしよう。この時間は,私の人生にとって,貴重な生き甲斐となっているといってよい。

 因みに,私の理想体重は57キロで,65キロ以上で肥満となるようである。前途多難ではあるが,考えようによっては大きな目標ともなるので,楽しいことでもある。体重の変化は,一つの実験材料として,経過観察のうえ今後も報告を継続したいと考えている。
 それにしても,裁判官も多忙だが,毎日夜8時から3時間もそれ以上も仕事を要求されるなんて,弁護士業も何と異常で非人間的な職業なのであろうか。
(平成17年7月)