右の者に対する出現罪被告事件について、平成○年○月○日午前○時○分に公判を開廷しますから、当裁判所第○○号法廷に出頭してください。正式な理由がなく出頭しないときは、勾引状を発することがあります。
平成○年○月○日 盛岡地方裁判所 裁判官 山猫賢治
ひところに比べると、たいへん丁寧な表現になっている。しかし、あくまで召喚するのは裁判官でありその場所は裁判所である。これを逆転してしまう発想は普通の人にはできない。裁く者が裁かれたり、裁判官に召喚状を出したりというような自在な視点で見られると、裁判もあるフィクションの上に成り立っていることが見破られてしまう。賢治が訴訟は「つまらない」と言った理由はそこにあるのではないか、と私は思う。 ところで、鹿児島地方裁判所に、アマミノクロウサギほか3匹が、ゴルフ場建設を目的とする開発許可の取消を求めて訴訟を提起した(1995年2月23日朝日新聞)。この訴えはまもなく却下されてしまった。ウサギが訴訟を提起するという視点の転換に裁判官はついていけなかった。賢治ならこの訴訟をどう言うだろうか。