● 「わが不老長寿法」(続)その12
岡山弁護士会弁護士  宮 本  敦 
(サポーター,元日本裁判官ネットワークメンバー) 
1 今回はビタミンなどの抗酸化物質の研究である。健康のためにはビタミンを多く摂取することが必要であるとされており,これは異論のないところであろう。  ビタミンによく似た物質として,ポリフェノール,フラボノイド,カロテノイド,キサントフィルなどの名前をよく聞く。いずれも抗酸化物質と言われているが,ビタミンやカテキン(お茶に含まれる),ルチン(日本そばに含まれる),リコピン(西瓜やトマトの赤色),アントシアニン(ブルーベリーやナスの紫色)などとはどのような関係なのか。これらはどのように分類されるのかを整理し,日頃の疑問を解明しておきたいというだけのことである。それが不老長寿に何か役立つことになるかどうかはよく判らない。

2 そこで早速国語辞典を調べてみた。ビタミンとは「動物の正常な発育と健康を微量で保ち,生命活動に不可欠な有機物の総称」とある。有機物とは「有機体を構成する物質」とあり,有機体とは「有機物から構成され,生活機能のある組織体」とある。ポリフェノールとは「同一分子の中に二個以上の水酸基を持つ植物成分の総称」とある。ウーンよく判らない。フラボノイドなどは国語辞典には説明さえ記載されていない。

3 困って本屋に出かけたが,適切な本は見つかず,専門書を本気で捜す気にもなれなかった。医学事典も立ち読みした。そういえば以前,同じような思いで,何か本を買ったような気がする。そこでわが家の本棚を捜してみると,「成人病・ガン・老化は活性酸素が引き金だった」(井土貴司監修・日東書院・平成8年初版)という本が見つかった。やや古い本ではある。その本と立ち読みした医学事典などで纏めてみた。やや雑な内容かも知れないが,仕方がない。

4 酸化力の強い活性酸素が細胞や遺伝子を傷つけることが老化やガンの原因であるというのが,今も医学の最先端の説であると思われる。ところで活性酸素には4種類あるとされている。酸素原子は原子核のまわりに8個の電子が5つの軌道で回っている。内側の第1から第3の軌道の電子は2個ずつで回っており,2個あると安定するのだそうである。ところが第4と第5の軌道には1個ずつの電子しかなく不安定である。そして2個の酸素原子が結合して酸素分子になると両方の第5軌道の電子が8の字の状態でコンビを組んで安定する。しかし第4軌道の電子が1個ずつ不安定なまま残るというのである。そしてその不安定な第4軌道の電子がどうなるかで4つのタイプの活性酸素ができるという。  例えば酸素分子の一方の酸素原子の第4軌道の電子が他方の原子の第4軌道に移動して,一方の酸素原子の第4軌道には電子が2個になり,他方の原子は第4軌道の電子が存在しなくなっているというタイプがある。また他所(細胞など)から電子を奪って,一方のみの第4軌道の電子が2個になっており,他方の第4軌道は1個のままであるというタイプもあるという具合である。他にも2つのタイプがあるらしいが,これ以上は書かない。とにかく活性酸素は甚だ不安定で,他の物質(細胞など)から電子を奪おうとする作用が甚だ強く,この電子を奪う作用が酸化であり,酸化により細胞や遺伝子は傷つき,細菌は死ぬのだそうである。

5 この不安定な4種類の活性酸素に電子を与えて安定させ,酸化力を弱める物質が抗酸化物質であり,活性酸素の種類に応じて,どのビタミンが作用するとか,どのポリフェノールが作用するというように,活性酸素のタイプにより異なるらしいのである。

6 活性酸素が発生するメカニズムは単純ではないようであるが,タバコを吸うと大量の活性酸素が発生するのだそうであり,タバコは完全に止める必要があるとのことである。またストレスもその原因となるし,飲酒も適量に抑えるべきとされている。

7 また抗酸化物質には,酵素,蛋白質,ビタミン,ポリフェノールなどがあるそうである。酵素は体内で蛋白質から合成される物質で,SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)やセレニウム,カタラーゼなど約3000種類あるとされている。抗酸化力も強いが,その合成には蛋白質と鉄,銅,マンガン,亜鉛などのミネラルが必要なのだそうであるから,蛋白質やミネラルを意識して多く摂取する必要があることになる。 またビタミンではビタミンA(ベータカロテン),C,Eが抗酸化物質であり,ビタミンやポリフェノールは体内で合成できないので,食物として摂取する必要がある。不老長寿のためには,これらも意識して多めに摂取する必要があることになり,場合によってはサプリメントで補給することも効果があるということになる。

8 ポリフェノールの定義は前述のとおりであるが,カテキン,ルチン,リコピン,アントシアニンなどは全てポリフェノールということのようである。  またフラボノイドというのは植物や果物に含まれている色素で,約3000種類あるとされているが,ポリフェノールとフラボノイドの関係について明確な説明がなされておらず,甚だ判かりにくい。ポリフェノールとされているリコピン,アントシアニンなども植物や果物に含まれている色素であるからフラボノイドということになりそうである。そうするとフラボノイドの概念の方が広くて,フラボノイドの中には,「同一分子の中に二個以上の水酸基を持つ植物成分」であるポリフェノールと,そうでないものがあるということになるのであろうか。キサントフィルもカテキンと同じように野菜などに含まれる色素の固有名詞で,カボチャなどに多く含まれているそうなので,フラボノイドに含まれることになるのであろう。カロテノイドはカロテンに似た赤,黄の色素だとあるから,フラボノイドということなのであろうか。

9 調べてはみたものの余りよく判らなかった。そして疑問はなお残るが,一応満足したのでもうこれでやめよう。調べた結果は余り役にも立たないような気もするが,以上の結果からすると,4種類の活性酸素に対抗し,不老長寿を目指すためには,多種類のビタミンに限らず幅広く色野菜などの色素や色んな種類の抗酸化物質を広く摂取することが効果的であるという理屈になる。

10 先頃私は日本ソバに凝って,美味しく食べる工夫をしたが,実はこれは日本ソバに含まれるルチンを多く摂取する目的であった。また毎日トマトを1個食べることにしているのも,赤い色素のリコピンを摂取するためである。今美味しい卵納豆ご飯に凝っていて,毎日1個の卵を数か月食べ続けた後で,医師に血液検査を受けるという実験中であるのも,コレステロールをチェックしたうえで,今後良質の蛋白質である卵と納豆とナットウキナーゼという酵素をしっかり摂取しようという意図によるものである。

11 いずれにしても,今回の努力の結果として,私の髪がなお黒いのは単なる偶然ではなく,この10年余り抗酸化物質を意識的に多く摂取してきた成果であることが納得できた。そしてとにかくビタミンやポリフェノールやフラボノイドや蛋白質やミネラルをセッセと摂取しようという気持ちが一層強まったことだけは間違いないようである。
(平成20年12月1日)