● 「わが不老長寿法」(続)その6
岡山弁護士会弁護士  宮 本  敦 
(サポーター,元日本裁判官ネットワークメンバー) 
1 平成19年9月中旬ころの日曜日の朝,NHKのテレビで「ベテランズマスターズ」なる番組を見ていささかショックを受けた。日本人の91歳の老人が水泳の背泳200メートルで世界新記録を樹立したという放送であった。これまでの世界記録を一挙に30秒近く短縮し,4分4秒で泳いだが,目標の4分を切れなくて悔しいというものであった。若い頃から水泳に親しんできた人だということであった。

2 私は健康法の一つとして,ウイークデイ週2回,土日を含めて月10回を目標にプールに通うことにして,平成19年8月からほぼ目標を達成している。泳ぐ時間は1回20分に限定しており,今のところクロール専門であるが,最近少し上達して25メートル一休み組から50メートル一休み組へと進化した。ところで私のクロールは50メートルで約1分10秒である。かの背泳の200メートルの世界記録は50メートルで1分1秒という計算になるから,それよりも遙かに遅い。しかも彼は私よりも30歳近く高齢である。

3 「ベテランズマスターズ」の出場資格は60歳以上で,5歳単位の組分けになっているようである。世の中には元気な人がいるものだと感心した。私は走行中の車をわざわざ停車させて30分間この番組を見た。録画できなかったのは残念である。しかし私のアンテナは敏感に反応した。
 私はこれまでは健康のためにダラダラと泳いできたに過ぎないが,水泳にも意欲的な目標を設定することにした。あわよくば私も水泳の世界記録を目指すというのは到底無理なことだろうか。
 そういえば何年か前にも同じような番組で,85歳前後の老人が陸上の200メートル走で世界記録を目指して全力疾走をしているのを見た記憶がある。正確な記憶はないが,30秒を切っていたのではないかと思う。この時も感動したような記憶である。

4 私は早速この二つの番組を,私のトレーニング生活の参考にすることにした。すぐに水泳と陸上の参考書を買ってきた。私は遊びも理論から入って上達を目指すのが好きである。既にテニスの本は何冊も買ってある。種目別に順番を決めて,毎日一種目だけ10分間トレーニング書を読むという目標を設定した。

5 水泳については,クロールで400メートルを楽に泳げることを目標にすべしと書いてある。ターンもトンボ返りターンで,見ている人から「上手い!」と思われるようになりたい。世界記録をねらうなら超100歳ころになりそうであるが,先は長いが頑張ってみよう。
6 私は毎朝30分犬と散歩している。距離は約2・5キロで約3500歩であるが,内1キロは走っている。犬の散歩を酷暑の夏のテニス大会に備えたトレーニングとして活用しているのである。100メートル走っては少し休み,また走ることを10回繰り返すのであるが,前述したテレビを見てからは,1日1回は全力疾走するようになった。

7 このような発想でトレーニングを続けるならば,80歳や90歳で水泳やテニスを趣味として,若者達が顔負けするように走り回ったり,泳ぎまくるという生活も決して夢物語ではなさそうである。なんだか面白いことになってきた。ブクブクと太ってなんかいられないし,やけ酒を飲んでなんかもいられない。

8 私の健康法に関する読書は,内容的な深さを増しているし,私の健康法に関する思索は日々進化している。
 私はこの10年近く,毎年夏に消化器系の人間ドックの受診を続けているが,これは今後も続けようと思っている。脳ドックはこれまで3年に1回程度に過ぎなかったが,動脈硬化が多少進んでいる気配がある。そこで脳ドックはどの程度の間隔で受診するのがよいかを医師に尋ねたところ,私の年齢になると年1回がよいという回答であった。そこで毎年夏にいわゆる人間ドックを,毎年冬に脳ドックを受けるというシステムを思いついた。一部検査内容が重複するので,半年位検査をずらすことにしたのである。

9 健康は他人が守ってくれるものではない。自分の健康は自分で守らなければならない。私は木原美智子さんの突然の死で大きなショックを受けた。彼女は健康には注意していたということであるが,水泳指導中にくも膜下出血で倒れたということであった。過労なのだろうか。彼女は脳ドックの検査は受けていたのだろうか。最善の手を尽くしてもなお,病気になることもあるだろうが,それはやむを得ない。後で手抜かりを後悔することのないように,何か不安があれば病気を恐れず素早く病院で検査を受ける必要がある。病気に対処するには「先手必勝」である。異状や不安を感じながら,多忙を理由に放置しておいて,手遅れになってから後悔するというのは余りにも愚かである。そうなるのは医学的な無知が原因となっていることが多い。不老長寿のためには自己を律する強い意思が必要であるが,医学的な知識も必要である。煙草が有害であることは知っていても,煙草をやめることができない人は,煙草の危険性の程度に関する医学的な知識が決定的に不足しているのだと私は思う。煙草の危険性に関する医学的な知識が十分あれば,恐ろしくて煙草を吸う気になど到底なれない筈なのである。煙草は最も効果的な自殺行為であると認識すべきである。

10 不老長寿は,自分の心身に優しい人生を送ってきたかどうかという,自分の人生のトータルな結果なのである。努力の余地のない遺伝的な要因も大きいだろう。しかし努力が決定的に大きな意味を持つと私は思う。日常の食事や生活慣習が体に優しいかどうか,十分な睡眠や休養が取れているかどうか,仕事上のストレスの程度はどうかなどが決定的な要因となっている。

11 人生はいろいろと大変ではあるが,その人生をいかに楽しく,意義あるものにするかという点は,本人の努力や工夫による部分が大きい。忙しいということは何の弁解にもならない。忙しい人生を,しかしなお楽しくて仕方のない人生とするための努力と工夫が必要である。そのためには仕事も人生の様々な苦しみも前向きに受け止めて,「大変さを楽しむ」という悟りの境地に到達する必要がある。私は,やけ酒はやめて,「仕事も遊びも頑張る。」という決意で,かくしゃく超百歳を目指して,多方面で頑張りたいと考えている。

     以上
(平成19年12月1日)