● 「わが不老長寿法」(続)その4
岡山弁護士会弁護士  宮 本  敦 
(サポーター,元日本裁判官ネットワークメンバー) 
1 「不老長寿」のためには適度の運動を継続することが決め手となるが,そのことを明確に意識して,意識的に運動を継続している人は案外少ないように思われる。毎日1時間歩けば健康によいと分かっていても,よほどの決意をしなければできない。早く適度(軽度)の運動を生活習慣に組み込み,歯磨きと同じように,毎日の生活で当然なされるべき作業にすることがポイントである。それをしないと気持ちが悪くて落ち着かないというようになることが望ましい。とにかく何か1つ,毎日続ける運動を作ることである。また土,日をいかに工夫するかも大切である。どんなに忙しくても,土,日なら少しの運動はできる筈である。土,日はトレーニングの稼ぎ時である。

2 適度の運動を継続するためには,その意義をしっかりと把握することが必要である。健康を失ってから後悔したり,反省するのでは遅いのである。私は適度の運動を継続すると,運動をしていない自分に比べて,健康でかくしゃくとした人生が10年伸びると考えている。私は60歳から80歳が経済的にも時間的にも余裕があって人生の黄金期だと考えているが,その人生の黄金期が10年伸びるという話であるから,頑張る動機としては十分だろう。人生の黄金期を十分楽しむことなく,それが短期間で終わってしまうのは余りにも惜しいということである。

3 無理のない工夫の例としては,次のようなことが考えられる。
 ア 土,日(どれか一つでもよいし,全部でもよい。)
  (1) 毎週1回,2時間程度テニスなどのスポーツをする。
  (2) 毎週1回,30分から1時間程度自転車に乗るか散歩する。
  (3) 毎月1回,近くの山(丘)を2時間程度ハイキングする。
 イ ウイークデイ(どちらも毎日)
  (1) 毎朝5分,テレビのニュースなどを見ながら柔軟体操をする。
  (2) 毎日夜,決めた時間に15〜30分程度自転車に乗るか散歩する。

4 トレーニングを継続するためには,トレーニング自体を楽しく充実した人生の一部と考えて,毎日の楽しみ(至福の時)にすることが望ましい。そのためには,もしも十分時間的な余裕があれば,自分は日常生活で一体何をしたいかを考えてみて,それを主として土,日に,一部ウイークデイに振り分けて,できるだけ短時間で終了できるように工夫して,生活に組み込むのである。最初は1つから始めて,少しずつ増やすのがよいと思う。例えば私がやりたいこととして,テニス,水泳,ハイキングなどがある。いずれも減量目的でもある。土,日はともかくとして,いずれもウイークデイには簡単にはできそうにない。

5 まず水泳であるが,目標は週2回。夕方6時になると事務員が帰宅するので,私はすぐに持参している弁当を食べ,運動服に着替えて,6時半に水着の入ったリュックを背負って自転車でプールに出かける。10分でプールに着く。約20分で6往復,300メートル泳いでサウナに5分,石鹸で全身を洗って事務所に帰る。1時間20分で事務所に帰ることができる。グデグデしていると1時間位はすぐに過ぎるから,気分転換や気持ちの充実という意味からもとてもよい。体重も減る。少し休んで8時から約2時間机に向かう。

6 次にテニスであるが,私は毎週土曜日の午前10時から12時までは原則としてテニスをすることを義務としている。できたらやろうというのではない。優先するのである。しかしそれでもなかなかできないが,頑張ることにしている。そして夏場は,ウイークデイの夕方,週2回,1回15分間を目標に,事務所から車で10分もかからない所にある河原のコンクリートの水門で壁打ちをすることにした。テニスの日は夕方の明るさ加減にあわせて,午後5時から6時の間に食事する。夕方が明るく壁打ちできる期間は1年のうちでも案外短かく,工夫がいる。事務所を出て40分後には悠々事務所に帰ることができる。サーブを左右15球ずつ,ボレー,左右のストロークで合計15分。案外面白く,毎日でもやりたいが,欲張らずとにかく週2回が目標である。華麗な蝶のような舞を舞う自称「壁前(へきぜん)の魔術師」を目指すのである。
 テニスや水泳を続けていると,わずかだが日々技術の向上を感じることができ,毎日やりたいという気持ちになり,それが継続の動機となるし,その後で机に向かっていると,とても精神的な充実感を味わうことができる。

7 次にハイキングである。これは土,日でなければ無理である。家から車で約15分の別の場所に標高170メートルと260メートルの2か所の山がある。私は2週間に1回の割合で,減量のため交互にハイキングをすることを目指している。登り始めて下山するまでに,それぞれ1時間と1時間30分なので,家を出てから帰宅するまでに1時間30分と2時間である。どうしようかと迷うことも多いが,行って帰ったときはいつも,「行ってよかった。」と思う。本当は2か月に1回位,高い山に登りたいが,その条件はない。

8 私が住んでいる岡山市は,大体自転車で用事をこなせる規模の街なので,練習場も近く,トレーニングの条件には甚だ恵まれている。テニスと水泳とハイキングの予定を実行した週は,甚だ精神の充実を感じることができる。ただし,現実の達成率は5割というところであろうか。

9 トレーニング項目を日常生活にどのように組み込むかは結構工夫を要する。人生の豊かさにも関係する。毎日できること,2日に1回,週1回,2週に1回,月に1回などと分類し割り振ってみる。そして実践しながら修正し,計画を練り上げて行く。この作業は結構楽しい。無理して頑張るといずれ全部が崩壊する。一覧表を作成し,予め予定を鉛筆で「しるし」をつけたり,成果を全て記録すると,とても気力が充実し,継続のエネルギーとなる。

10 トレーニングの継続にはトレーニングが面白くて仕方がない状態が望ましい。そうなると毎日でもやりたくなる。日々のささやかな上達の喜びを実感できればしめたものである。それは粘り強い反復練習の中から生まれる。1年後にも10年後にも継続できる方法を工夫し,編み出さなければならない。

11 私が毎日習慣としているのは,朝5分間の柔軟体操(腰の回転,ダンベル体操を含む。)と30分の犬の散歩である。これをしないと1日調子が狂う。そして今必死に頑張っているのは,朝のテレビ小説を見ながら約6分間,500回の室内自転車漕ぎである。夕方の水泳,夕方と土曜のテニス,土,日のハイキングも案外頑張っていると言ってよいだろう。

12 トレーニングの時間は短い方がよい。特にウイークデイは,「疾風(はやて)のように現れて,疾風のように去ってゆく」という自称「月光仮面トレーニング法」のような,短時間で終わるが,継続したいという意欲が湧く効果的なトレーニング法を自分で編み出す必要がある。ウイークデイのトレーニングの継続の極意は,短時間(15分程度)で切り上げること,練習が面白くなるように工夫すること,頑張り過ぎないことである。

13 私のトレーニング計画は,しばしば仕事の影響を受けて挫折するが,案外しぶとく頑張っている。私は,苦しい仕事も楽しいトレーニングも全て人生の大切な「生き甲斐」にしてしまい,人生の黄金期のまっただ中を,人一倍存分に楽しんでやろうという野心に燃えて生きているのである。
(平成19年8月1日)