● 量刑評議の工夫,進め方をポイントに
太田由美子(ファンクラブ) 
 Jネット主催の裁判員制度模擬裁判が行われました。会場からも裁判員希望者を募り、貫定手続を経て選出された6名の裁判員と、Jネットの現職裁判官3名が裁判劇終了後に会場で評議をし、被告人の量刑を決め、会場で判決を言い渡すというものです。

 かつて京都地裁で実際に使われた陪審法廷は映画のセットのように美しく、綿密に練られたシナリオで、被告人も証人もとても迫力があって、劇とは思えないほどでした(左陪席を演じた裁判官はつい引き込まれて原稿から散れたことを質問して証人が返答に困ったとか・・・)。

 事案は、交際していた恋人から、上司の娘Aと婚約したから別れてほしいと言われ、憤激した被告人が元恋人BにAを殺してくれと頼み、BがAの渡部を切り出しくり小刀で突き刺し、怪我をさせたというものでした。被告人は事実を認めているため、Bとの間に共謀共同正犯が成立することは争いがないのですが、すでにBには懲役6年の判決が確定しており、被告人の量刑をどの位にするかが最大のポイントでした。

 量刑を考える際の決め手となる事実がいくつかあり、それを被告人が主導的な役割を果たしたとする積拠にできるかどうかについて、様々な意見が出されました。それらを整理することは、むしろ事実認定よりも複雑な作業だといいう感じがしました。しかし、傍聴席からみる限り、3名の裁判官と6名の裁判員は実に根気強く対等の立葛に立ってどういう量刑がいいのかお互いの意見をぶつけ合っているようでした。

 最終的に懲役6年が4人(うち裁判官2人)、懲役5年が2人(うち裁判官1人)、懲役4年が1人、懲役3年・執行猶予が2人という意見に分かれたため、被告人を懲役5年に処する。との判決が言い渡されました。多数の意見〈懲役6年)が過半数に満たないときは過半数になるまで次に軽い量刑の意見(懲役5年)が加えられ、その中の最も軽い量刑が宣告刑となるのだそうです。〉傍聴席から質問をした学生は、裁判員が裁判官と対等な一票をもっていると聴いて感動していました。陪審であれば必要のない量刑についての市民参加がうまくいくかどうかは、鞍薫裁判官がどれだけ市民の感覚まで降りることができるかにかかっているのではないかと感じました。
(平成16年12月)