近藤最高裁判事の最近のご活躍,特に刑事関係での鋭いご意見には敬意を払っていただけに,定年までまだ4年を残した突然の訃報は,残念でならない。
他に追悼文を書くのに適任の人はいると思われるのだが,私なりの感慨を書いてみる。
私は,41期で判事補に任官した。就任直後に熱海で研修があり,新人判事補が一堂に会した。席上に「○○裁判官」という札が並んでいて,「おお,こんなに裁判官がいるのか」と思ってしまい,その中に自分が含まれているという自覚と実感が伴わない暢気な新任判事補であった。
当時,近藤崇晴さんは,司法研修所の事務局長をしておられ,この研修まで直接にお話しするような機会はなかったが,酒の席で言われた一言が未だに心に残っている。「くまちん君には,仕事の面では期待してないから。君は裁判所を明るくするために採ったのだから」という一言である。当時は,「そんなに二回試験の成績が悪かったのか」とガックリ来たのだが(後年情報開示請求したらやっぱり悪かった。笑),今思えば,従来ならはじかれたかもしれない異色の人材も入れて,裁判所を少しでも多様で明るい雰囲気にしようと,本気で考えておられたのだろう。その期待に応える間もなく,わずか8年で辞めてしまったのは,大変申し訳ないことをしたと今更ながら思う。
近藤さんを中心とする第三小法廷の活躍で,刑事弁護人に希望の光が差したのは紛れもない事実である(一例が、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101116110859.pdf)。近藤さんの遺志を継いで,日本の刑事裁判を国民に信頼されるものとしていく有為の人材が続々と輩出されることを願う。
PS 最高裁の紹介ページからは,激務の合間を縫って,内田樹の「街場のメディア論」などをチェックされていたことがうかがわれる。
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/saibankan/kondou.html
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