● わがB級グルメ道(その4)
岡山弁護士会弁護士  宮 本  敦
(サポーター)
1 今回は「うどん」の話である。うどんについても色々と思い入れがあるが,最近自宅でも外食でも,美味しいうどんを食べて満足したという記憶に乏しい。

2 あれは今から20年も前,高知で勤務していた頃のことである。着任して間もなく職員から美味しいと評判の店を沢山教えて貰った。その中に美味しい讃岐うどんの店も入っていた。当時長女が小学生,次女が保育園児であったが,教えて貰った店を順番に,毎週末に食べ歩くことになった。勿論その中に讃岐うどんの店があった。

3 その店には沢山のメニューがあったが,私は偶然食べた暖かい「野菜天うどん」がとても気に入った。毎日でも食べたいと思った。家族も皆その店が気に入ったので,高知にいた4年間,その店にほぼ毎月1回の割合で食べに行ったのである。野菜天としてシイタケ,シソの葉,タマネギなど,やや小さ目の3個のてんぷらが入っていたと思う。センスがよくとても美味しかった。私は当初何回か野菜天うどんを食べ,一応満足したので,次からは色々なメニューのうどんを順番に食べることにしようと思うようになった。そしてこの次は「肉うどん」にしようなどと思って,店を出るのである。

4 ところが,何しろ月に1回しか行かないために,次回行ったときにはまたもや野菜天うどんが食べたくなっている。かくして高知在勤中,おそらく30回近くその讃岐うどん店に通ったと思われるが,結局私はお気に入りの野菜天うどん以外のうどんを食べることはなかったのである。

5 そのようなことがあったためか,私はその後各地に転勤するたびに,それぞれの地にお気に入りの野菜天うどんを食べさせてくれる店を探すことを繰り返し,各地にそれなりに美味しいうどん店を見つけて,行き付けの店とした。しかし未だ高知のあの店ほど,私を満足させてくれる店には出会っていない。

6 その後転勤で郷里に帰り,有名うどん店を食べ歩いた。いずれもそこそこ美味しいが,未だに高知のあの店のように,「恋い焦がれる」ようなうどん店を見つけることはできないでいる。私の郷里のうどんは,どの店も私を満足させる何かに欠けているのである。美味しいとされている店はどこも似たり寄ったりで,野菜天としてサツマイモやカボチャ,ナスやピーマン,タマネギの大きな天ぷらがいくつも入っている。てんぷらのボリュームがあり過ぎて,とても油っこいように思う。又来ようとは余り思わない。私はシイタケやシソの葉やタマネギや絹サヤやアスパラガスなどの,やや小さ目の天ぷらが2〜3個入った,毎日でも食べたくなるような美味しいうどんを食べたいのである。しかしそのような店は未だ見つからない。これはセンスの問題であろう。材料費が高くなるというのであれば,多少値段を高くしても店は繁盛すると思うのである。

7 数年前に高知に行く機会があって,野菜天うどんを食べようとあの店を訪ねてみたが,そこはもううどん店ではなくなっており,とても残念に思った。私の郷里は高松から近い所なので,本で調べていずれ休日の安い高速料金で,本場の讃岐うどんの店を探して,お気に入りの店を見つけたいと思っている。また県内に,車で片道40分の所にある裁判所支部の近くに,比較的気に入ったうどん店を見つけたので,その裁判所支部の法廷やその地の警察署に接見などで出かける機会があるときは,必ずそのうどん店で一食を済ますことにしている。もっとも野菜天ではなく,小エビ天うどんであるのは残念ではある。その店のうどんを食べるたびに,どうすればこの味が出せるのだろうかなどと,熱心に味を研究しているのである。

8 私の手もとに10冊余りの料理の本があるが,不思議なことに「うどん」については余り参考になることが書かれていない。そこで本屋に出かけて本を探してみたが,やはりうどんに関して参考になる本を見つけることはできなかった。そこで私は,合格点を与えている自信作の「そーめん」のつけつゆを約2倍に薄めることで,うどんのつゆの味については合格点を与えるに至った。そしてうどんを食べようと思う前日には予めスーパーで野菜天や掻揚げ天を買っておくのであるが,今のところまだ高得点は与えられないでいる。わが町のスーパーでは私のお気に入りの野菜天を売っていない。

9 妻との5年間の仕事上の別居が解消した頃,私は妻に頼んで何度も春野菜などのてんぷらを作ってもらい,とても美味しかった。妻が野菜天を作ると私が「美味しい,美味しい」と言って,殆ど平らげてしまうので,妻があきれたのか,健康に悪いと思ったのか,最近は余り作ってくれなくなってしまった。その後私のうどんの研究が進んだ結果,妻の絹サヤやシイタケやアスパラガスなどで野菜天うどんを作りたいという強い衝動がある。どんなにか美味しいうどんができるだろうと思っているが,未だ試していないのである。

10 妻が野菜天を揚げても,決してうどんを作る前にてんぷらを平らげてしまうような愚かなことはしないと約束をして,例の「無抵抗土下座舌ペロリの術」なる秘術を使えば,病みつきになる程美味しい野菜天うどんが完成しそうな気がする。それより妻においしいてんぷら作りを教えてもらう方が先決かも知れない。妻と私の2人分のうどん用に,気軽に自分で少しだけ野菜天を作るのである。土,日なら可能であろう。いずれにせよ時間の問題である。満足できる野菜天うどんが完成した場合には夫婦で転職して,裁判所のすぐ近くに「○○亭」と称する「うどん・そば・そーめん店」を開店してみようかと,妻と会話したこともある。私のお気に入りのラーメン店と同じように,とてもはやって「行列のできる店」になるような気がする。などと夢想するのも,春近き今仕事に疲れて「春の夜の夢」を見たがっている心境なのかも知れない。

(H22・2・1)