● 「身を殺して仁を成す」 |
山田眞也(千葉県弁護士) |
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先月アフガニスタンで凶弾に倒れた伊藤和也さんの死を悼む
ペシャワール会の会報が届いたのを一読して、世界の苦悩を座視しつつ、安逸に明け暮れながら、やれ税金が重いの、血圧が高いのと、こぼすばかりの己の日常と、伊藤さんが不惜身命の覚悟で目ざしたと思われる理想の高さとの、比べようがない落差に、いつもながらのやましさを覚えた。
会報の記事の内容は、ペシャワール会のホームページにも掲載されているが、故人の父、伊藤正之さんの言葉の一部を、少しでも広く伝えたいと思って引用する。
「和也は5年前、初めてアフガニスタンに行く時、「僕に何かあったら、アフガニスタンにこの身を埋めてくれ」と言って家を出ました。その時から、このような事が起きるかもしれないと危惧を感じておりましたが、本人の強い意志を尊重し送り出しました。現実に心配していたことが起きてしまいましたが、私たち家族は決して和也をかわいそう、気の毒などとは思っておりません。小さい時からやさしく他人思いの子で、妹・弟に対しても、いつも自分は一番後でいいと言って何でも譲っていました。アフガニスタンでも変る事無く、地元の人々に接することで、少しずつ受け入れられたと信じております。」
伊藤さんの31年の生涯は、論語の「志士仁人、無求生以害仁、有殺身以成仁」(衛靈公篇九 志士仁人は、生を求めて以て仁を害[そこな]うこと無し。身を殺して 以て仁を成すこと有り)という一節によって、語りつくされるだろう。
この悲劇がペシャワール会の今後の活動に与える打撃の大きさは測りがたいが、これをよすがとして、この会への支持が少しでも広がれば、故人への何よりの供養となるだろう。私は年額3000円のささやかな会費を納めているに過ぎないが、 金額の大小にかかわらず、一人でも多くの力添えが得られることを願いたい。
アメリカの大統領選挙が間近な今、日本でも政権交代を賭けた総選挙が目前に迫っている。日本では、テロの脅威は、さほど深刻には感じられないのが幸いだが、アメリカでは、もしオバマ候補の優位が広く伝えられるようになれば、ヒラリーがつい口を滑らせてしまったとおり、ロバート・ケネディの悲劇がオバマの身に再現するのではないかという危惧を抱かざるを得ない。そういう最悪の事態が起きないことを祈るばかりだ。もっともオバマが当選しても、アフガニスタンやイラクやパレスチナの惨状が、どれほど改善されるかは、誰にも予想できまいが。
自爆を殉教と信じさせ、それが天国への道につながると教え込むような悪魔の横行を、誰が阻止できるのだろうか。アメリカの軍事力で、それができないことだけは、間違いないと信じられるのだが。 |
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