第1位 裁判員裁判始まる(5月。第1号事件は8月)
第2位 足利事件で再審開始決定(6月)
第3位 3000人合格計画達成困難に(9月以降)
第4位 過払事件の急増,いわゆる過払バブル状況(年間を通して)。
第5位 参議院議員選挙上告審(大法廷)判決(9月)
第6位 被疑者国選弁護人制度の適用範囲が拡大(5月)
第7位 芸能人の薬物事件で,捜査及び裁判報道が過熱(特に8月以降)
第8位 裁判官ネットによる裁判員裁判実施記念企画(6月)と10周年記念企画(11月)
第9位 労働審判制度の利用拡大(年間を通して)
第10位 和歌山毒カレー事件上告審判決(4月)
番外にしましたが,触れておきたいものがあります。今後の動向に目が離せないものとして,(1) 債権法改正の動きの本格化と,(2) 検察審査会法改正(5月)です。(1)は,4月,民法学者や法務省の担当職員らが参加した民間の「民法(債権法)改正検討委員会」が改正試案を発表し,10月,法相が法制審議会へ諮問。11月には法制審議会民法部会が開催され,1年半程度の調査審議を経て中間的な論点整理を行うことが提案されています。(2)では,検察審査会の権限強化が行われ,1回目に続き,2回目も起訴相当の判断の場合は,起訴議決がなされ,裁判所が指定した指定弁護士が原則として公訴を提起することになりました。いずれも,平成22年以降に,その動向が10大ニュースに入ってくるものと思われます。その意味で,今年は番外にさせていただきました。
残念なものとしては,昨年に続き,今年も裁判官の不祥事があったことです(2月,福岡高裁宮崎支部判事の準強制わいせつ事件。6月,懲役2年執行猶予5年の有罪判決。当該判事は,4月に任期終了退官。)。
なお,これも番外ですが,今年の出版・ドラマ関係では,骨太の作品が多かったように思います。例えば,長沼事件,平賀書簡事件に係わった福島重雄さんの証言本「長沼事件 平賀書簡 35年目の証言」が出版され(当ブログ5/6欄参照),戦時中の翼賛選挙を無効にし,東條英機首相と争った吉田久裁判長の「気骨の判決」がドラマ化(同6/29欄)されたことなどです。ETV特集のドキュメンタリー「死刑囚・永山則夫ー獄中28年間の対話」(同10/21欄,12/16欄)もありました。その他には,話題漫画のドラマ化「サマヨイザクラ」(同6/9欄)など裁判員裁判を対象にしたものが数知れずありました。
10大ニュースと番外を眺めていると,今年の最大の特徴は,平成司法改革の内容が,全て実施されることになったこと(第1位,第6位,番外(2))でしょう。これで,枠組みづくりとその実施は一段落ですが,昨年に続き,平成司法改革の揺り戻しの動きもありました(第3位)。平成22年以後,どうなるのか興味あるところです。
今年は,判決や決定では,3つ挙げました(第2位,第5位,第10位)。昨年は,婚外子の国籍法規定は違憲との最高裁大法廷判決,青写真判決見直しの最高裁大法廷判決,相次ぐ原爆症認定集団訴訟の判決,福島県立大野病院事件について,医師に無罪の福島地裁判決の4つでしたので,1つ減ったのですが,足利事件の再審開始決定は,法曹界だけでなく,社会的に影響力がとても大きいものでした。再審の判決は,来年3月26日が予定されているようです。
その他,民事刑事や労働審判の事件の中で,顕著な動き(第4位,第9位)や印象的な事件(第7位)があったのも今年の特徴かもしれませんね。
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