● 司法10大ニュース(平成19年)

第1位

裁判員裁判の実施への取組みが進む(部分判決制度導入の法改正,模擬選任手続の実施,裁判員に量刑資料提供・裁判員のための警備強化・裁判員候補者からの質問に民間委託で対応などの各方針提示,裁判員のための介護施設の紹介,取調べの可視化の動き,自白調書不提出の場合もありうるとの最高検試案発表,保釈率の上昇,民間企業で裁判員のための休暇制度の創設など)。

第2位

薬害肝炎訴訟,政治も動かし解決へ(大阪高裁の和解案骨子,政府が議員立法へ,原告ら側も受け入れへ)(12月)。そういえば,今年は,残留孤児訴訟も,与党のプロジェクトチームが出した支援策を,原告らが受け入れた動きもありました。

第3位

新旧60期司法修習生,司法研修所卒業。不合格も多いだけでなく,就職できない「宅弁」も発生。これに関し,各地の弁護士会で法曹人口についての決議。

第4位

裁判もの大ヒット(周防正行監督映画「それでもボクはやっていない」,北尾トロ著「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」(文春文庫),長嶺超輝著「裁判官の爆笑お言葉集」(幻冬舎),ドラマ「パートタイム裁判官(2)」(TBS),連続ドラマ「ジャッジ〜島の裁判官奮闘記(NHK))。裁判への関心の高まりか。最高裁も映画「裁判員〜選ばれ,そして見えてきたもの」を作る。

第5位

証券市場に関係して,重要な決定・判決が続く。証券市場に甚大な影響も。(ブルドッグソース事件決定,ライブドア・村上事件判決など)

第6位

犯罪被害者が刑事裁判に参加する制度の創設(平成19年6月27日法第95号,1年6か月以内に施行)(6月)

第7位

ADR法施行(4月)。国民生活センター,医療分野(東京3弁護士会,9月),大阪弁護士会(9月),日本証券業協会(12月)等において,ADR設置又はADR認証申請の方向。裁判所や法務省の労働審判・筆界特定制度などのADRも順調な滑り出し。

第8位

世間を揺るがした年金分割問題で,第三者委員会に全国で弁護士投入。基準は,民事裁判的なものに(6月)。法曹人口増の中では,大事な動き。

第9位

法廷警備等の問題が深刻化。法廷で裁判官が襲われ,法服が破られる事件(5月,東京地裁が刑事告発),藤沢簡裁で放火事件(7月),弁護士事務所で殺人事件(大阪,9月)などが発生。

第10位

日本裁判官ネットワークの岡山総会開かれる。長嶺超輝さんの講演のほか,総会でブログ充実や季刊誌発刊の方向性が決まる。(12月)


 そのほかにも,奈良の少年事件で法務省,奈良家裁が動き,結局刑事事件になったこと,年金分割が始まり家裁実務が動き出したこと(4月),鹿児島志布志町の選挙違反事件(2月,鹿児島地裁),北方事件(3月,福岡高裁),富山の再審事件(11月,富山地裁高岡支部)などで,無罪判決が続いたことも記憶に残ります。

 ご意見は何かとあろうかと思いますが,(1) 司法自体の構造変化をもたらす出来事,(2) 司法が政治や社会に大きな影響を与えた出来事,(3) 司法関係で大きなニュースになった出来事などの視点で選んでみました。全体としては,裁判員裁判をはじめとした改革の準備や実施が進み,その影響が出始めたこと,それに合わせて司法が映画や本で取り上げられることが多くなったことが今年の特徴でしょうね。
 また,何月の出来事と入れることができない継続的な動きのニュースが多かったですね。そのため,何月の出来事であるかは省いているニュースも多くなっています。