衝撃が走った弁護士12万人超の予測
11月22日,日本弁護士連合会が、司法試験合格者の増加に伴う弁護士人口の将来予測を発表したと報道されています。それによると,現在の2万2000人余から、50年後の2056年には約5.6倍に当たる12万3484人にまで増えるようです。国民772人に弁護士1人で、フランス(2005年1488人)とドイツ(同623人)の間となります。弁護士からは「これだけ増やす必要があるのか」との声も出ているとのことです。
おそらく,全国の弁護士の皆さん,それに司法修習生,法科大学院生,法学部生の関心の的だと思います。12万人超ということで,衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。
不安を抱える若手
最近,若い弁護士,特に都会を根拠地とする若手弁護士ほど,将来に不安を抱えているという声を聞きます。弁護士人口が増えすぎて,生活が大変になり,格差も大きくなるというわけです。そのため,法曹人口の拡大についても,見直しの声が出ていると聞きます。
司法試験に合格したから安泰などという時代は去り,若い人たちが不安を抱えているのはよくわかります。司法修習生も,就職が大変そうです。大量の司法修習生が生まれている実情は,「Judgの目 その4」を見て下さい。
ただ,不安を持つだけでは,なかなか前向きな意見が出てこないのではないでしょうか。法曹人口を増やすと決まったときから,今の事態は予想されており,反対意見もあったのですが,何とか実現に向けて進み出しているまだ最初の段階なのです。不安を持つ若い人たちには,まず,何故,法曹人口を増やすことになったのか,それはどこで決まっていて,何を目指してるのかを是非知って欲しいと思います。
基本は,平成13年6月12日の「司法制度改革審議会意見書」
いろいろ意見を持っている人は多いのですが,この意見書を読んだ人は極めて少ないのです。それが実に残念です。平成11年に設置された司法制度改革審議会は,法曹だけでなく,学者や,経済界,労働界,主婦連など司法のユーザーの人たちをメンバーに加え,司法の将来像について,司法全般を検討しました。しかも,それは,司法だけの問題ではなく,日本の将来像とも関わったものです。そのことは,意見書の「I 今般の司法制度改革の基本理念と方向」によく表れています。
そして,意見書は,「II 国民の期待に応える司法制度」「III 司法制度を支える法曹の在り方」「IV 国民的基盤の確立」で具体的提言を様々に行いました。司法試験合格者3000人案は,その中の提案の一つです。この具体的提案により,数多くの法律ができ,政府も財政的な支援をして司法改革は動いています。まず,この全体像と歴史をきちんと理解して欲しいと思います。
もちろん,反対意見を持たれることは自由でしょう。でも,まず「敵」を知ることが大事なのではないでしょうか。
確認したい司法改革の理念と全体像
司法制度改革審議会の議論も,つい先日のことのように思っていたのですが,時の流れは速く,もう歴史になっているのかもしれません。しかしながら,今,動いている司法改革は,すべて司法制度改革審議会意見書が基礎になっているのです。これを知る人,これの作成に少しでも携わった人たちは,後輩や若い人たちにその理念と全体像を是非伝えていかなければならないと痛感します。 |