● judgeの目 その4
  
大量の司法修習生がやってくる!
浅見 宣義(大分地裁)  
司法修習生とは?
 最近は国民の皆さんも耳にすることの多くなった「司法修習生」。テレビドラマでも時たま取り上げられる。これは,一言で言うと,「裁判官,検察官,弁護士の卵」であり,法律家にとっては,この卵の時代が「青春時代」である。皆それぞれに,感動やほろ苦い経験などいろいろな思い出を持っている。司法試験を合格後,一定期間司法研修所(埼玉県和光市)と日本各地の裁判所,検察庁,弁護士会で学ぶことになっている。


司法修習生の増加!
 平成司法改革は,司法制度を支える人的体制の充実強化を1つの柱にしているので,法曹人口の拡大が必要であり,法律家の卵である司法修習生も当然増やされることになる。私が司法修習生に採用された昭和61年前後は,総数450人から490人程度であった。それが,平成16年採用は,約1200人である。平成17年には,1500人程度になる。そして,平成23年ころには,3000人程度になる予定である。単純計算して,私のころの6倍以上。見方によっては,関門はとても広くなり,法律家を目指す人が多くなった。とても喜ばしいことである。私は,語弊があるかもしれないが,分かりやすいように,若い人には,「司法は成長産業です」と述べている。それだけ,世間の法的需要は増え,法曹人口も増えるのだから,司法修習生を目指そうというわけである。


心配の種は?
 でも,司法修習生の大幅増加で,心配されることもある。実は,法律家にとって,司法修習生の時代が「青春時代」として思い出に残るのは,初めて法律実務に接することもあるが,マスプロ教育に慣れた学生が,徒弟制度ともいえる1対1の個別指導で教えられるところにある。私も,担当裁判官として,司法修習生の1人1人に接し,それぞれの起案に手を入れ,1対1で議論している。時には熱い議論もする。単純なことなのだが,これが絶大な意味をもっており,指導する裁判官,検察官,弁護士と司法修習生との何とも言えない人間的関係を築く基礎になっている。私も,司法修習生のころ教えていただいた法曹三者の指導官の方々には,格別の感謝の念を持っている。しかしながら,こうした指導方法は,残念ながら今後難しくなって行くであろう。司法修習生が大幅に増えるからである。また,司法修習の期間も,1年6か月から1年間に短縮されるからである。私のころは2年間であった。法律家の基礎的素養も当然心配されている。

 しかし,心配事ばかりではない。従来の司法試験という一発試験による選抜から,法科大学院を中核とするプロセス重視の法曹養成制度が始まっている。司法修習だけでは困難であるが,司法試験に合格する前に,法科大学院で法曹の素養を身につけるシステムができているのである。その将来は,まだまだ予断を許さないが,せっかくつぼみをつけた法曹養成制度改革を何とか花開かせたいものである。特に,法曹の一極集中を改善するためにも,地方の法科大学院にがんばってほしいと思う人は多いのではないだろうか。
(平成17年1月)