いよいよ裁判員裁判が施行され,対象事件がすでに起訴されたとの報道が続々なされている。この原稿を書いている時点(5月27日)での最高検察庁の発表では,施行後5日間で15件の起訴があったとのことである。
司法統計からの予測では年間約3600件の対象事件の起訴が見込まれている。
これからすると,ほぼ毎日10件程度の起訴の割合であり,5日間で15件は,少ないペースである。
まだ,発足当初であり,検察庁も起訴を慎重に検討している段階であろうから,この数字でなにかを語るのはあまりにも時期尚早であろう。
しかし,私はあえて次のような仮説をたてている。
裁判員裁判は市民が重大な刑事裁判に参加する制度であることは,広報活動や賛否両論渦巻く中で,すでにかなり国民の間に周知されたのではなかろうか。
さて犯罪者から見た場合,この制度はどのように写るであろうか。
もちろん,営利目的犯や組織的凶悪犯などは,捕まらないことを前提に犯行を周到に計画し,捕まった後の裁判など予期も予想もしないため,制度変化が影響するとは考えにくい。
しかし,それ以外の一般的な殺人,強盗,強姦などの犯人(正確には犯行に及びそうな人)にとっては,この制度は非常にいやな制度と思うのではないだろうか。それは,裁判の公開性が高まり,国民の関心も広がるからである。
これまで多くの刑事裁判は,少数の例外を除いて,法曹三者と被告人,被害者関係者のみが参加する静かな法廷で行われ,ひっそりと刑務所に入っていった,のである。 ある意味でプロの壁に守られていた側面もあるのではないか。
それが,直接市民の目からみた質問を受けたり,市民の考えが判決結果を左右する事態に変化することは,「恥を知る」日本人の国民性からは,ある意味で耐え難い側面があるのではないか。
そこで私としては,裁判員裁判制度がこのような重大犯罪の抑止に一定の効果を発揮するのでは,と密かに思っている。
このような議論はいまだかつて聞いたことがないので,楽天家の私の戯言に終わる可能性が高いが,なお今後の推移を見守りたい気持ちもある。
以上,裁判員裁判の運用について,いろいろい述べてきた私の「番外編」でした。
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