● 「サイコーですか?最高裁!」を読んで
チェックメイト
 前著「裁判官の爆笑お言葉集」がベストセラーになった長嶺超輝さんの新著が、光文社から昨年末に出版された。前回の日本裁判官ネットワークの総会でお話を伺っていたので、さっそく買い求めて目を通した。

 一言で感想を述べれば、大変な労作である。前半は面白おかしく書いてあるように見えるが、中身は法律書並みのハイレベルで、最高裁ウオッチャーを自認する私も知らないエピソードが沢山あった。そして、後半の資料にある歴代全最高裁裁判官の国民審査関連データは、これまで類書が無かったと思われる充実度だ。形骸化して「忘れられた一票」となっている国民審査を何とかしたいという、著者の情熱を感じる。
 ただ、この内容を本当に面白いと思って熟読する国民が多ければ、既に国民審査は成功している筈だと思う。アメリカの連邦最高裁判事に比べて注目されないのは、日本の裁判官に個性が乏しいからだろうが、それは日本国民全般の没個性の傾向の反映でもある。裁判官に個性があること、突き詰めればその思想信条が判断に影響し得ることを、好ましいとは思わない国民も少なくないのではないか。ともあれ、本書がそれなりに売れれば、来たるべき次回総選挙の際の国民審査に向けた出版もあり得るとのことだから、期待したい。

 そこで、私のかねてからの持論を。国民審査を実効化するためには、こうした出版や国民審査公報の充実もさることながら、先行投票をして結果発表してみたらどうかというアイディアがある。まず法律家が日頃からもっとよく最高裁裁判官を研究し、自主的に模擬投票をして、本番の一般国民の投票の際の参考にしてもらうのである。少なくとも日弁連には、会を挙げてこのような運動を展開してほしいものだと願っている。
(平成20年2月)