皆様からのメール(2007/02/01)



30歳代 男性 自営業

 私は39歳の自営業者です。妻35歳。長男2歳で,結婚3年目です。実は先日,妻が子供を連れて家出をし,実家に帰ってしまいました。新婚当初より喧嘩が絶えませんでした。

 先日もちょっとしたことから喧嘩をし,妻は翌日に家出をしてしまいました。家出後,何度かこちらから妻宛に電話やメ−ルで話し合おうと連絡しましたが,黙殺され続けていたところ,妻が代理人の女性弁護士をつけ,離婚調停を申し立てられてしまいました。理由は性格の不一致だそうです。

 離婚の是非自体は夫婦の問題なので仕方ないのですが,問題は,別居後二か月以上になりますが,その間,何度子供に会わせて欲しいと言っても,全くとりあってもらえないことです。会うのが無理なら,せめて子供の写真や近況でも伝えて欲しいと言っても,弁護士はまったくとりあってくれません。その間の私の精神的苦痛は,おそらく同じ経験をした者でないと分からないと思います。まだ離婚をした訳ではないのに,このような拉致に等しい行為が黙認されている日本の司法制度に非常に疑問を感じる次第です。

 また,離婚時の親権の問題にしても,現状では圧倒的に女性有利です。男性有利にしろとは申しませんが,なんとか諸外国並に離婚後も共同親権,共同監護を実現できるよう法改正はできないのでしょうか?離婚による最大の犠牲者は子供です。夫婦は離婚をすれば他人となりますが,子供にとっては,どちらも血の繋がったお父さんであり,お母さんです。

 実務的な面をみても,共同親権,共同監護ということにすれば,家事事件の件数も激減し,裁判官の皆様にとっても,それだけ負担が減ると思います。

 今後増えることはあっても経ることはないと思われる問題ですので,実情にあった早急な法改正が必要だと思います。

(平成18年12月)


30歳代 男性 千葉県
 裁判官の皆様にお伝えしたいことがあります。

 最近の重大事件(少年事件を含む)で動機や行動が不可解で特異なものである場合、被疑者が精神鑑定で「広汎性発達障害」(アスペルガー症候群や高機能自閉症などの総称)と診断されることが多くなっています。

この障害の特性はまだ一般には十分理解が広まっておらず、その理解も難しいものです。この障害持つ人のものの感じ方や考え方は独特で、一般的な常識からの視点からでは彼らの心の内を理解するのは困難なことが多いです。

 「広汎性発達障害」を持つ被告の裁判では、検察側も弁護側もこの障害についての知識をあまり持っていないことが多く、検察側は被告の障害の特性は軽視して一般的によくみられる犯行動機を主張し、それに対して弁護側は被告に「広汎性発達障害」があり犯行時は精神衰弱の状態だったと主張することがよくあります。裁判官もこの障害についての知識がない場合が多く、合理的でわかりやすい検察側の主張が取り入れられる傾向があります。

 以上のような裁判では「広汎性発達障害」は単に責任能力のみが争点になっており、この障害の特性と事件の動機や背景との関係が十分に考慮されていないので本質的な裁判が行われたとは言えません。また、一般の人々に「被告が『広汎性発達障害』であったので不可解で恐ろしい事件を起こした」という間違った印象を与えかねません。

 事件の動機や背景とこの障害との関係をはっきりさせて事件の原因を明らかにすれば、再び同じような事件が起こるのを防ぐ手がかりが掴め、一般の人々がこの障害を持つ人達に対して無用な恐れを抱くことはなくなると思います。そのためには、検察官や弁護士が「広汎性発達障害」について理解を深めるのはもちろんですが、裁判官も公正な判断を下すためにこの障害についての正確な知識を持つべきだと思います。

(平成18年12月)



30歳代 女性 京都府

 本日(1月20日)の例会「速記官・法廷通訳問題を考える」に参加させていただきました。速記官・法廷通訳の方々の重要性をひしひしと感じました。わたしは法科大学院修了生ですが、在学中にもこのような話を聞く機会があるといいのに、と思いました。教官をしておられる裁判官の先生方だけでなく,いろんな考えの裁判官の存在を法科大学院の学生に報せる機会があるといいのではないでしょうか。

(平成19年1月)


40歳代 男性 公務員
 昨日,周防正行監督の「それでもボクはやっていない」を観ました。痴漢冤罪事件を題材にした社会派ものですが,最初から最後まで考えさせられることだらけです。この映画は,現在の刑事裁判制度が抱える問題点を網羅しており,活きた刑事訴訟法教材といえるのではないかと思います。是非,裁判官ネットワークのメンバーの方々やサポーターの方々,刑事裁判に携わる人すべてに観て欲しいと思います。

 この作品をみて私が感じたことを一言でいうならば,「手加減なし」のリアリティということでしょうか。法廷シーンは本当に細部に至るまで忠実に作られており,裁判官の表情や書記官のちょっとした仕種,検察官の手元まで実にリアルです。また,法廷での発言も一切,脚色されておらず,例えば証拠の採否をめぐる裁判官と弁護人のやり取りなど,とても一般の市民には理解できないでしょうが,そのままセリフとして残っています。エンターテイメントとはいえ,一般大衆に阿らず,手加減なしに市民の目から刑事裁判の問題点を指摘した希有の作品であると思います。

 最近,裁判員制度広報用に最高裁や日弁連が製作したビデオも観たのですが,その内容のなんと空疎なことか。本当に哀しくなります。「それでもボクはやっていない」が90パーセント以上のリアリティをもって刑事裁判の問題点を鋭くあぶり出しているのに対し,裁判員広報用のビデオは90パーセントがフィクションで,しかもそれを観るであろう一般市民を無知蒙昧な有象無象と捉えて,それに阿り,現実に目をつむり,理想のみを描き出しているように思います。まあ,現行の刑事裁判には何の問題もないが,国民の司法参加によって意識を高めるのが裁判員制度導入の理由と断じている当局によって作られるものですから,周防作品と同列に扱うこと自体無理なのかも知れませんが・・・。

 「それでもボクはやっていない」を観た人に,裁判員広報ビデオをみせて,感想を聞いてみたい気がします。

 どうか,是非,「それでもボクはやっていない」を観て裁判官の立場からご意見をお聞かせください。たぶんこの作品の感想を言えるのは裁判官ネットのメンバーしかいないと思います。周防監督との対談を企画されているようですが,熱望します。できれば,私も参加したい。

 この作品を観た後,いろいろな場面が気になって,思わず刑事訴訟法の基本書を買ってしまいました。私をそんな気にさせてしまう周防監督ってすごいです(単に,私がお調子者なだけ?)

(平成19年1月)