本日弁護士会館で「裁判員裁判における法廷技術」に関する研修会があり、私達法科大学院の学生も参加させていただきました。
前半は制度自体の説明で、後半は刑事手続の冒頭陳述を4名の弁護士の方が行い、それを私達法科大学院の学生は裁判員になったつもりで評価するという企画が行われました。
評価項目は内容のことはもちろん、声の大きさや抑揚、立ち姿、アイコンタクトなどかなり細かいところまでが評価の対象になっていました。弁護士の方たちは、裁判官や検察官の意見に裁判員が引き込まれてしまわないようにすることに、非常に重点を置かれていました。無罪推定の原則をいかに裁判員に伝えるかに皆さま大変苦慮されておられました。身振り手振りを使って一生懸命説明されている方、パワーポイントを使って説明されている方、いろいろな方の個性が出ていて大変おもしろく思いました。
「蓋然性」という言葉は一般市民には分かりにくいのではないか、被告人の手錠姿を裁判人に見せたり、被告人の服装がだらしなかったら裁判員に悪い印象を与えるのではないか等具体的で鋭い指摘もありました。「裁判官はえらくない、裁判員とあくまで対等の立場」と力説されておられる方もいました(笑)。
裁判官、検察官、弁護士と立場がそれぞれ違いますので、どの意見が正しいのかを判断するのはなかなか難しいことですが、裁判所の裁判員制度に対する姿勢で若干気になったことがありますので、個人的な意見を申し上げたいと思います。
一つ目に気になったことは、弁護士が映像等を使って裁判員達に説明をしようとしても、機材等の設備で裁判所によってばらつきがあるという点です。ある裁判所では非常に機器等の設備が整っているが、ある裁判所ではそうではないという説明が、弁護士の方の話の中にありました。今日の研修会では、たとえばパワーポイントを使って裁判員に語りかける弁護士の方もいました。裁判員が内容をよく理解できるようにするためには、こうした工夫も必要なことと思います。設備面で遅れている点があれば、改善していくべきではないでしょうか。
もう一つは、裁判所が裁判員制度の啓蒙活動を行う際に、一般市民の公募によって模擬裁判員を募集してみてはどうかという点です。現在裁判所が行っている模擬裁判の模擬裁判員は、非法律職の職員からランダムで行い、公募はまだされていないとの話がありました。実際の裁判員となる人達は、職業・経歴・性別・年齢・家庭環境等実に様々です。一言で「市民の常識」と言っても、これらの事情によって受け取り方も異なることと思います。より多くの人に裁判員制度の存在を知ってもらうためにも、またできるだけ多くの人の感覚が生かせるように、公務員である職員の方達だけでなく、もっと多くの市民が模擬裁判に参加するようになれば、裁判員制度に対する社会の認識はもっと高まっていくのではないでしょうか。
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