● 可視化のもう一つの側面

花(サポーター)

 取調の可視化については,すでにその必要性は社会の共通認識となり,あとはその範囲や方法,代替捜査手法の要否についての議論に移っており,可視化の議論そのものが限られた範囲にとどまっていた時期よりは,かなりの進展がみられると思います。

 可視化は,密室で被疑者,参考人がどのような取調を受けたのかが,後日裁判の場で明らかにできないことから被疑者等に結果的に不利な認定がなされやすい,という現実を改善しようとするもので,被疑者の防御権の確立に寄与するものと考えられます。

 ところで,最近あるシンポで,イギリスの供述心理学者のお話を聞きましたところ,イギリスでは供述心理学者が中心となって捜査官向けの取調マニュアル(頭文字をとってPEACEマニュアルというそうです。)を作り,取調官はそのマニュアルの習熟度に応じてより困難な事件に対応できるようになっている,とのことでした。

 私が,注目したのは,マニュアルの内容もさることながら,現実にマニュアルどおりの適正な取調がなされているか検証するためにも取調の可視化が必要である,と指摘されたことです。

 警察庁,あるいは最高検察庁が,いくら適正な取調を励行するよう呼びかけ,あるいは立派なマニュアルを作成しても,現実にそのとおりおこなわれているかが闇の中では,結局適正な取調は実現しないでしょう。

 適正な取調により厳正な処罰を求める立場からも取調の全面可視化は必須と思われます。
(23.10.1)