11月20日の毎日,読売などの新聞に「無期受刑者戦後最多」などと題し,昨年(平成21年)末時点で法務省が調査した結果として,無期懲役で服役している受刑者が1772人にのぼり,戦後最多になったことが報道されていました。その原因は,厳罰化傾向によって無期懲役の判決数が大幅に増えたこと及び無期受刑者で仮釈放される者が大幅に減ったからです。1772人の無期徒刑者とは,既決囚総数約6万7千人(平成20年当時)の2.6%にも当たります。
犯罪白書を調べましたら,平成元年から平成10年までの10年間に,無期懲役の判決を受けた者は352人(ちなみに死刑判決を受けた者は42人)であったが,平成11年から平成20年までの10年間には,無期懲役の判決を受けた者が906人(ちなみに死刑判決を受けた者は122人)でしたから,この10年で無期懲役判決は2.57倍(死刑判決は2.9倍)に増えたことになり,重罰化傾向が顕著です。
また,上記新聞報道によると,平成12年から平成21年までに無期懲役で新たに服役した者が合計930人であったのに対し,仮釈放された者は65人だけであったこと(ちなみに,獄死した者は126人),平成21年に仮釈放された6人の平均服役期間は30年2ヶ月であって,平成12年に仮釈放された者の平均服役期間が20年2ヶ月であったことと比較すると,仮釈放が非常に厳しくなっていることが報じられています。
死刑と無期懲役との落差が大きすぎるとの批判があって,仮釈放のない終身刑の新設が検討されているようですが,この10年間をみると,無期懲役は実質上,終身刑に近くなっているといえますので,仮釈放のない終身刑は必要がないと思います。
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