先日,韓国の国民参与裁判を傍聴する機会がありました。
到着した仁川空港では,軽機関銃を持った警備員を見かけて,厳重な警戒ぶりに驚いたのですが,帰りに同空港に向かう高速バスの中で北朝鮮の砲撃が開始されたという臨時ニュースが入り,帰国できなくなるのではとバス内に緊張が走りましたが,なんとか無事に帰ることができました。そのため空港警備の厳重さも妙に納得しました。
さて,韓国の国民参与裁判は,戦前の日本で施行されていた陪審制と似たところがあり,被告人の選択制のため実施件数が少ない,陪審の評決結果に拘束力がないなど,問題点もありますが,3年前から施行され,日本の裁判員裁判にも参考となるところがあると思い1度見てみたかった光景です。
午前11時ころに法廷に入ると,陪審員の選出手続の最中でした。(本来非公開ですが日本からの専門家視察団というこで特別に見せてもらいました。)
陪審員候補者に検察官と弁護人が直接質問して,忌避の材料にしていたようです。
その後,箱の中から書記官が候補者の番号を書いた紙を取りだし,双方から忌避の無かった陪審員7名,補充員1名を選出後,被告人が入廷しました。
公訴事実は勤務先の店のお金10万円くらいを盗んだというもので,日本でいう常習累犯窃盗と同様の事犯でしたが,自首,被害弁償の事実があったらしく,勾留請求が却下され,在宅でした。日本ではどうかな,と思いましたが,韓国の勾留下率は約2割ですと説明を受けて驚いた次第です。
審理は,被告人の常習性の程度を争う内容でしたが,同意された供述調書の取調について検察官がスクリーンに映し出して要旨の告知をしたのに対して,すぐに弁護人も同じ内容を映し出して,その意味を説明し,さらに検察官が反論し,その応酬が3回くらい繰り返されましたが,要旨の告知の方法としておもしろいと感じました。
また,韓国では,重い罪については量刑基準が決められ,そのあてはめについては量刑調査官が関与しているようです。この事件でも量刑調査官の証人尋問が実施されていました。
昼の休憩をはさんで午後5時半頃にはまだ被告人質問の途中でしたが,残念ながら次の予定があり,法廷を出ざるを得ませんでした。
あとで聞きますと,判決は当日午後9時半ころにあり,検察官の求刑は懲役3年で,判決は常習性を認めず,懲役8か月とのことでした。
落ち着いた木目調の明るい法廷で,裁判長も時間を余り気にせず非常におだやかな訴訟指揮をされており,和やかな法廷であったこと,長時間にもかかわらず陪審員が熱心に双方の意見に耳を傾けているのが印象的な法廷でした。
|