● 私の「家庭裁判(隔)月報」(4)
竹内浩史(さいたま家裁川越支部・飯能出張所)
(自判解説)
 離婚訴訟の中には、本訴と反訴という形で、夫妻の双方が離婚を求めているケースも少なくない。子の親権や、財産分与ないし慰謝料が中心に争われているケースである。
 実は、このような場合の双方の離婚請求をどう判断するのかという点は、判例が統一されていない。常識的には、双方が離婚を求めているというだけで離婚を認容して良いように思うのだが、異論を唱える高裁裁判長もいらっしゃった。
 私は、次のように一般論を判示して、双方の離婚請求を民法770条1項5号「婚姻を継続し難い重大な事由」に基づいて認容することにしている。ただし、念のため、客観的に破綻状態を示す事実として、別居年数を認定している。どちらが有責であるかにここでは一切立ち入らないのは、相手方の離婚請求が認容されたのは自分が有責と判断されたからだという当事者の誤解を避けるためである(有責当事者については、判決の最後の慰謝料の項で判断する。)。
 何も憲法の規定まで持ち出す必要はないのではないかと言われそうだが、双方が離婚を請求したらなぜ当然に「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するのかを理論的に説明しようとすれば、憲法24条1項を援用するのが最も素直だと思っている。

(判決抜粋)
 原告と被告は、既に約x年にわたり別居を継続している。そして、双方共に、婚姻破綻を主張して離婚を請求しており、正常な婚姻関係を修復する意思を完全に喪失していることが明らかである。
 このような場合、両性の合意のみに基づいて成立しているべき婚姻(憲法24条1項)の前提が全く失われているのにほかならないから、その余の主張について判断するまでもなく、民法770条1項5号所定の「婚姻を継続し難い重大な事由」があるものとして、双方の離婚請求を認容すべきものと解する。
(平成21年12月)