● 女王の裁判所 その1
チェックメイト 
(この物語は、あくまでフィクションであり、実在の人物・事件・テレビドラマとは無関係の女教諭の話である。)

 今年のこのクラスの担任になったのは、私よ。さっきはいきなりの抜き打ちテストでみんな驚いたでしょう。成績順に返すわね。あなたたちったら、いつも喧嘩ばかりして、世話が焼けそうね。私、いいこと思いついたの。一番点数が良かったA君にご褒美として特権を与えるわ。これからこのクラスで起こる揉め事は全部、A君に裁いてもらうの。文句ないわね。このクラスも色んな子がいるわ。まさに社会の縮図ね。これからどんな事が起こるか、楽しみだわ。

 そう、A君にはクラスメートみんなの揉め事を裁いてもらうんだから、ルールを決めておかなくっちゃね。A君は自分の良心に従って、一人で判断するのよ。ほかの人と相談しちゃ駄目。校訓と校則に従って、どちらの言い分が正しいか決めるの。もしも、どう考えても変な校則で、校訓に反すると思ったら、校則は無視してもいいわ。この学校の校訓は何だったかしら。黒板の上に額が掛かっていたわね。「みんな仲良く」よ。A君には私の代わりに大変な役目を頼むんだから、特別にお小遣いをあげるわ。金額は、何があっても途中で下げたりしないと約束するわね。(つづく)
(平成17年10月)