● 弁護士任官どどいつ(47)

竹内浩史
    「日本の判事は 在任中は 減俸されない」なんちゃって

 この4月から2年間にわたり、国家公務員は1割前後の大幅な減俸をされることになった。特に裁判官については「報酬は、在任中、これを減額することができない」との憲法79条6項及び80条2項の明文規定があるにもかかわらずである。過去の人事院勧告に従った1%前後の減俸とは全く事案が異なる。これでは、改正が容易な「軟性憲法」どころか、「なんちゃって憲法」と言われかねない。

    「十年契約」最終年に「二年限り」と言われても

 弁護士任官者である私は、折あしく、ちょうど憲法80条1項が規定する裁判官の任期十年の最終年に入った。もちろん再任の可能性もあるが、そうしない選択もあり得る。他の国家公務員と同様の終身雇用を前提にして、減俸の期限を2年と切られたところで、あまり意味は無い。

    3分の1も 天引きされる 判事は「優良 納税者」
 まさかとは思うが、少なからぬ国民は、国家公務員が国税を納めていないと誤解しているのではないか、との疑念さえ生じる。そうでなければ、「国民に増税で負担を求める前に、まずは減俸せよ」などという議論が、なぜ当たり前のようにまかり通るのだろうか。実際には、これほどの税金を確実に徴収されている職業は、他に例が無いように思う。

    「いやになったら いつでも辞める」「俺がやらなきゃ 誰がやる」
 ともあれ、ついに再任期を迎えてしまった。弁護士任官者の長所は、いつでも退官して弁護士に戻る覚悟と自信にあると思っていた。この前段部分は吉田茂が首相を引き受けた時の名言とされるが、潔くて痛快だと思う。しかし、他に誰がやるのか、問題提起の最適任者は私ではないのかという思いも断ち切れない。何とも難解な局面となった。

(2012年4月)