● 弁護士任官どどいつ(44)

竹内浩史
    当たる確率 そんなに高い? 3200分の1

 9月下旬、アメリカの人工衛星の破片が地球に落下するとの予報の中で、人に当たる確率は3200分の1と報道された。世間の受け止め方は「そんなに高いなら大変だ」というものだった。もちろん、これは地球上の誰かに当たる確率だから、自分に当たる確率は約二十兆分の1に過ぎない。まさしく「杞憂」の故事にぴったりの話だ。
 しかし、そもそも、3200分の1という確率自体が、本来そんなに高いものではない。この程度の確率であれば、何か裁判になるような事件が起きた時に、ある裁判官が将来担当する確率の方がはるかに高い。日本の裁判官は三千数百人しかおらず、地裁で民事・刑事の訴訟を担当している裁判官はその一部だから。
 私は、日本の裁判官があまり物を言わないのも、以上のことと関係があるのではないかという仮説を立てている。事件を担当することになった裁判官があらかじめ何らかの意見を表明していれば、それだけで忌避する当事者もいそうだ。とすれば、社会問題についてもなるべく発言しない方が無難であろう。
 私などは、このホームページやブログで比較的自由に発言しているように見えるかも知れない。しかし、それでも、これから裁判になって自分がどこかの裁判所で担当する可能性がある事件には言及しないことにしている。例えば、この間の大相撲力士たちの問題については、関心はあるけど題材にしないことに決めていた。あまり気にしていたら、何も言えなくなってしまいそうだが。

(11/10/01)