● 弁護士任官どどいつ(43)

竹内浩史
    休日返上 やり過ぎたるは 及ばざるごと 神経痛

あの発症から、もう半年になる。まさか、こんなに症状が長引くとは思ってもみなかった。そもそも、私が病気をするなんて、考えたこともなかった。

悲劇が襲ったのは、昨年12月17日(金)の横浜地裁の裁判官会議の日から。その当日は寝不足もあってか、ひどく疲れていた。会議後の恒例の懇親会に出席し、裁判所近くのホテルに自費で宿泊した。
翌朝は休日出勤し、午前中は月曜日の開廷に備えて記録読みに励んだ。
そして、昼食がてら、既に検証にも行っていた近くの交通事故現場を再確認し、帰宅してその事件の判決起案に取り組んだ。
夜になって「完成した!」と椅子から立ち上がったら、長時間座り続けていたためか、左の尻に激痛が走り、大変なことになっていた。

月曜日に皮膚科に駆け込んで受けた診断は「帯状疱疹」。過労やストレスが原因だという。投薬により、皮膚の表面は年末年始にかけて治ったものの、皮膚の下の神経痛の後遺症は、半年後の今も続いている。

裁判官は基本的に「座り仕事」なので、臀部の痛みは致命傷に近い。最も辛いのは、それでも休日に自宅で座って判決起案をしなければならないこと。
なぜ、あの日、泊まらずに帰宅してゆっくり休まなかったのか。なぜ、疲れが取れていないのに休日出勤したのか。なぜ、わざわざ事件現場を再確認に行ったのか。なぜ、休日なのに自宅起案を長時間したのか。後悔は尽きない。

しかし、これほどまでにしなければ、納得のいく仕事ができないのが、現実である。私に限らず、このところの裁判官一人当たりの事件数の激増は、心身を蝕みつつあるように感じる。

交通事件集中部で後遺症についても数多く審理している私が、自身の後遺症に苦しめられるとは、皮肉なものだ。局部神経症状の後遺症については、労働能力喪失期間が5〜10年程度に制限されることも多いが、私はそんなに長くは耐えられない。早く完治してほしいと祈り続ける毎日である。

    休日返上 やり過ぎたるは 及ばざるごと 神経痛

(11/06/01)