● 弁護士任官どどいつ(40)

竹内浩史(横浜地方裁判所)
    事件は5種類 親族間と 相隣・契約・事故・行政

 私は、民事裁判になる事件は5種類に分類できると考えている。紛争当事者間の関係が濃い方から、血を分けた親族の争い、ご近所との争い、契約を交わした当事者間の争い、出会い頭の事故のような赤の他人との争い、そしてかつては特別権力関係とも言われた行政との争いである。しかし、地裁の事件番号では全部(ワ)号事件にカウントされるし、事件名も「損害賠償請求事件」となることが多いので、区別しにくい。

    妻と夫の 衝突裁き 次は車の 衝突を

 私は前任地では主に家裁の人事訴訟係を担当していたので、前記分類では一応「親族」のジャンルとなる。ただし、離婚訴訟は「契約」のジャンルの色彩も帯びる。
 現任地の民事交通集中部は明らかに「事故」のジャンルだから、一見すると全く違うようだが、両当事者が激しく衝突している紛争には違いない。

    (交)号以外に (カ)号に(ア)号 (フ)号事件も 集中部

 それに交通事件の「専門部」ではなく、あくまで「集中部」だから、他の一般事件も配点される。感覚的には、交通事件、過払事件、その他の事件でほぼ3等分になる。そこで、交通事件に付される(交)の符号以外に、私の期日簿では独自に、過払事件には(カ)の符号を付けている。最近は賃料不払による明渡請求事件も目立つので(ア)の符号を付けるようになった。さらにもう一つ、(フ)の符号も付け始めた。不貞の相手方に対する損害賠償請求事件も少なくないのである。他に、遺産分割調停の範囲に納まらない相続紛争も多い。結局、前任地の家裁と同じような事件も裁いている。

    裁判官なら 三百枚を 割らずに落とすよ 皿回し

 それにしても最近、裁判官一人当たりの担当事件数は増加の一途をたどるばかりだ。
 前々任地の東京地裁民事通常部では、単独事件の未済件数は、初期は百数十件、増えてからも二百件前後にとどまっていた。現任地の横浜地裁では、下手をすると三百件に迫る勢いだ。この件数を基本的には全部、月に一回程度は開廷して回し、一件ずつ落着していかなければならない。もはや大道芸の皿回しの世界である。

(平成22年12月)