● 弁護士任官どどいつ(35)

竹内浩史(さいたま地家裁川越支部)
    人口164万支部は 十庁と立川 越えぬだけ

 私が現在勤務している、さいたま地家裁川越支部は、日本の総人口約1億2700万のほぼ1.3%に相当する管内人口164万(家裁飯能出張所の管内を含む。以下、万単位で切捨)を擁する、かなり大きな裁判所である。
 この管内人口の多さは、埼玉県西部の川越市(33万)、所沢市(34万)を初めとして、狭山市・入間市(各15万)、富士見市・ふじみ野市・坂戸市(各10万)、飯能市(8万)といった比較的大きな都市をいくつも管轄していることに起因する。
 全国の50本庁(47都道府県の都道府県庁所在地のほか、北海道の函館・旭川・釧路)と203支部を合わせた253庁の中で、川越支部の管内人口は、いったい第何位なのだろうか。この素朴な疑問から、自分で人口統計を調査してみた。

 まず、47都道府県人口のランキングを見ると、25位の山口県(146万)でさえ、県全体の人口で川越支部を下回っている。それ以下の県(26位から47位まで順に、愛媛、長崎、奈良、滋賀、青森、沖縄、岩手、大分、山形、石川、宮崎、秋田、富山、和歌山、香川、山梨、佐賀、福井、徳島、高知、島根、鳥取)には、川越支部を上回る庁があり得ないことは自明である。
 また、24位の鹿児島県(172万)から上位に向かって順に、熊本、三重、岡山、群馬、栃木、福島、岐阜、そして16位の長野県(217万)までの間には、川越支部の管内人口(164万)を上回る庁がないことは、容易に確認できる。唯一、政令指定都市の岡山市(69万)を擁する岡山本庁だけは念のために確認を擁するが、周辺市町村を含む管内人口を積算しても、やはり川越支部には及ばない。

 次に、15位の宮城県(234万)。本庁が管轄する仙台市(102万)は大きいものの、周辺の管轄区域を加えても川越支部の管内人口には及ばない
 14位は新潟県(239万)。本庁が管轄する新潟市(81万)に周辺を加えても、やはり及ばない。
 13位の京都府(263万)。これはさすがに、本庁が管轄する京都市(147万)に周辺を加えると川越支部の管内人口を上回っている。
 12位の広島県(287万)。本庁が管轄する広島市(115万)に周辺を加えると、やはり上回る。
 11位は茨城県(296万)。本庁は、管轄する水戸市(26万)に周辺を加えても及ばない。土浦支部を初めとする支部の管内人口も及ばない。
 10位は静岡県(379万)。本庁が管轄する静岡市(72万)に周辺を加えても及ばない。浜松支部も、浜松市(80万)に周辺を加えても及ばない。他の支部も同様。
 9位の福岡県(506万)。本庁は管轄する福岡市(140万)に周辺を加えると上回る。しかし、小倉支部は、北九州市(99万)に周辺を加えても及ばない。他の支部も同様。
 8位の北海道(554万)。さすがに札幌本庁が管轄する札幌市(188万)は、それのみでも川越支部を上回る。しかし、他の本庁は、函館市(29万)、旭川市(35万)、釧路市(19万)にそれぞれ周辺を加えても及ばない。ましてや支部は及ばない。
 7位の兵庫県(559万)。本庁の管轄は神戸市(152万)から西区(明石支部管轄)を除き、三木市と三田市を加えた区域となっている。そのため、川越支部の管内人口に及ばない。支部も及ばない。
 6位は千葉県(614万)。本庁は、管轄する千葉市(92万)に周辺を加えると上回る。しかし、松戸支部を初めとする支部は及ばない。
 5位は埼玉県(713万)。本庁は、管轄するさいたま市(117万)に周辺を加えると、やはり川越支部を上回る。しかし、他の支部は及ばない。
 4位は愛知県(739万)。さすがに本庁が管轄する名古屋市(221万)のみで川越支部を上回る。しかし、岡崎支部を初めとする他の支部は及ばない。
 3位は大阪府(883万)。同様に、本庁が管轄する大阪市(262万)のみで優に上回る。しかし、堺支部は、堺市(83万)に周辺の管轄区域を加えても、わずかに川越支部に及ばないようである。他の支部は遠く及ばない。
 2位は神奈川県(895万)。さすがに本庁は管轄する横浜市(357万)のみで上回る。しかし、川崎支部の管轄は、実は川崎市(132万)のみなので、川越支部には及ばない。他の支部も及ばない。
 1位の東京都(1289万)。これを二分する本庁と立川支部(旧八王子支部)は、もちろん大きく上回っている。

 以上をまとめると、管内人口で川越支部を上回るのは、10本庁(京都・広島・福岡・札幌・千葉・さいたま・名古屋・大阪・横浜・東京)と1支部(立川)のみのようである。
 したがって、川越支部の管内人口(164万)は、それらに次いで、堂々の第12位ということになる。

 ちなみに私は、この川越支部の人事訴訟係として、離婚を主とする人事訴訟を一手に引き受けている(他に週1日は家裁飯能出張所で調停・審判を担当)。
 人事訴訟は、ほぼ人口に比例して提起されるので、全国の人事訴訟の80件に1件以上は、現に私が裁いている。昨年の新受件数は164件。ちょうど人口1万人に1件の割合だった。
 やはり、日本の裁判官は、人口に比して少な過ぎると思われないだろうか。

(2010年2月)