● 弁護士任官どどいつ(31)

竹内浩史(さいたま地裁川越支部) 
私が、この連載から暖簾分けして2006年3月8日から続けているブログ
「弁護士任官どどいつ集」http://blog.goo.ne.jp/gootest32
は、長らく1日1首の更新を欠かさず、先日、登載作が1700を超えた。
中でも我ながら面白いと悦に入っているのは「判決どどいつ」シリーズ。
大きく報道された注目の判決を、どどいつに翻訳してみるという趣向である。この連載の(15)でも趣旨説明をしたことがある。

続けている中で、同一事案で1審から3審までの「判決どどいつ」が揃うという例が生じたので、まとめて紹介したい。「国籍法違憲」最高裁大法廷判決に至った事案である。

まず、東京地裁判決

    父も世間も ニッポン人と 認知している 子どもたち

 父が日本人、母が外国人の婚外子が、出生後に父親に認知された場合に、日本国籍を与えない国籍法の規定は憲法違反と判断した。

次に、東京高裁判決

    「判事は国籍 あげられない」と 子どもだましの 憲法論

 仮に上記国籍法の規定が憲法違反だとしても、新たな立法によらなければ、子が日本国籍を取得することにはならないとの理由だけで、東京地裁判決を取り消して請求を棄却した。

そして、最高裁判決

    奇岩城から 解放されて 飛び出す笑顔の 子どもたち

 上記国籍法の規定は憲法違反であるとし、かつそうである以上、その子の日本国籍取得を認めるのが合理的な解釈であるとして、東京高裁判決を破棄し、東京地裁判決を支持した。判決言渡直後に、大喜びで最高裁の建物から飛び出して来た子どもたちの笑顔が印象的だった。その後、紆余曲折を経て、上記国籍法の規定は改正された。

さて、子どもの権利にかかわる問題には、まだまだ未解決の難問が少なくない。
目下の大論点は、民法772条2項の嫡出推定に関わる「離婚後300日問題」である。
ここは、せっかく日本が批准して15年(1994年4月22日批准)にもなる「児童の権利に関する条約」(子どもの権利条約)も参照し、これまでの判例も含めて再考してはどうだろうか。この条約には、次のような重要な規定があることを想起したい。
(第7条1)児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。

    「子どもの権利」の 第7条は 「親に育てて もらいたい」
(2009年6月)