● 弁護士任官どどいつ(28)
竹内浩史(さいたま地裁川越支部) 
「ツマラナイカラ ヤメロ」と言って 和解勧告 する賢治

 川越市立美術館で「絵で読む宮沢賢治展」が開催された。とても素晴らしい内容で、裁判所の昼休みに何度も足を運んだ。
 宮沢賢治(1896年〜1933年)が病床で1931年11月3日に書いた「雨ニモマケズ」の手帳の実物も展示されていた。
 裁判官として気になるのは、有名な一節の中の次のくだりである。
「北ニケンクヮヤソショウガアレバツマラナイカラヤメロトイヒ」
 賢治はなぜ訴訟嫌いなのだろうか。

 童話の中に裁判を題材とした作品があることを、今回の展覧会で初めて知った。「どんぐりと山猫」である。
 絵本は色々出ているが、童話そのものは既に死後50年の著作権の保護期間が切れているようで、ネット上でも全文が公開されている

 誰が一番偉いかを争っているどんぐりたちに対する山猫裁判長のこんな発言が繰り返し出て来る。
「裁判ももう今日で三日目だぞ、いい加減に仲なおりをしたらどうだ。」
この難しい裁判を補佐してもらうために呼び出した少年が見事に収めるのだが、それは読んでのお楽しみ。童話の結びの一文も意味深長で味わい深い。

「ツマラナイカラ ヤメロ」のわけは どうせどんぐり 背くらべ
(平成20年12月)