● 弁護士任官どどいつ(27)
竹内浩史(さいたま地裁川越支部) 
「無罪書いたら 地方に飛ばす? 都市伝説には バイバイを!」

 最近話題となっている本から。
 「ハローバイバイ・関暁夫の都市伝説」がベストセラーになっている。
 そこで裁判所の代表的な「都市伝説」と言えば、まずはこれだろう。
 しかし、誤った有罪判決よりも正しい無罪判決の方が良いに決まっているのだから、そんなわけは無いとも思われるが。
 「信じるか信じないかはあなた次第です。」


「ハロー?バイバイ? 都市伝説の 東京高裁 シャンデリア」

 もう一つ思い当たる裁判所の「都市伝説」は、東京高裁・地裁合同庁舎ロビーのシャンデリア。
 NHKの司法記者を務めた清永聡さんの新刊「気骨の判決 東條英機と闘った裁判官」(新潮新書)の冒頭にも、シャンデリアの「伝説」が出て来る。
 「このシャンデリアにスイッチが入り、光を放つ時があるというのだ。それは退任する最高裁判事が、東京高裁の長官に挨拶に訪れた時という説と、年度末に転勤する職員を見送る時という説。さらには外国からの賓客を迎える時に灯されるという説もある。」(17頁)
 残念ながら私も目撃したことが無いので、真相は未確認。


「大津事件の 惟謙に比肩 吉田久を 忘れまじ」

 このシャンデリアは、戦後に新調されてはいるが、かつてここに戦前の大審院があった名残りだという。
 そして「気骨の判決」とは、戦時中の昭和17年4月の衆議院選挙、すなわち悪名高き「翼賛選挙」を無効とした昭和20年3月1日の大審院判決。「東條英機と闘った裁判官」とは、これを言い渡した大審院第3民事部裁判長の吉田久。
 これまでほとんど知られていなかった人物だが、司法権の独立を毅然として守った点で、大津事件の大審院長として有名な児島惟謙と並び称されるべき裁判官ではなかろうか。


「翼賛選挙を 無効にすれば 司法ファッショと 言われそう」

 それに引き換え、戦後の最高裁が選挙無効判決をしないのは情けないと言われてしまいそうだ。
 しかし、今はあくまで戦後民主主義の時代。
 前回の衆議院の総選挙も郵政民営化翼賛選挙などと称されているが、そう簡単に選挙を無効にすれば、司法の独走と非難されかねない。
 さて、風雲急を告げる政治情勢の下、間近となった今度の総選挙では、主権者国民はどのような選択をするのだろうか。
(平成20年10月)