● 弁護士任官どどいつ(13)
竹内浩史(東京地裁) 
「司法は独立! 二権と違う 上命下服と 多数決」
司法権の特質は「独立」である。国民の多数が選んだ国会議員からなる立法府が「多数決」で決めた法律を、行政府は「上命下服」で忠実に執行する。その遺漏や過ちを是正するのが司法府の重要な役割である。だから同じ失敗を繰り返さないため、全く異なる「独立」を基本原理とする。事件に当たった裁判官は独りで考え抜いて答を突き止めなければならず、最初から正解があるわけではない。いきなり最上級審に集まって、多数決で決めようとしたら誤る。だから、以前の裁判官会同は批判されたのだろう。

「ワンフレーズで 決定されて 説明尽くすは 裁判所」
「事後救済」が強調され、裁判官の判断は迅速と適正の両立を求められ、難しくなった。せめて決定をした人が事前に理由の説明を尽くし、大方の理解を得る努力をして来てもらえるといいのだが、最近の風潮はそうではない。「改革」「リストラ」に代表されるワンフレーズで進められ、国民の多数もそれで良しとしているようだ。しかし、世の中はそれほど単純ではない。公務員は減らせばいい、弁護士は増やせばいいというものではない。事後に救済の適否とその理由を説明しなければならない裁判官の苦労は増す。

「判事だけでは 解けない事件 仲間増やして 考える」
裁判官は独りで考えなければならないといっても、本当に難しい事件もある。そういう場合、一審では3人の合議に回してもよいし、上級審では最初から合議体である。本人訴訟で弁護士が付いてほしいと思う場合も、難しい事件をどう解決すべきか、裁判官と一緒に考えてくれる法律家がいてほしいからである。一見すると、双方に弁護士が付いて徹底的に論争することにより事件が難しくなるのではないかと思われるが、必ずしもそうではない。弁護士も社会正義に沿う解決を追求するからである。

「多数決では 解けない事件 裁いてみないか 若い衆」
裁判官のやり甲斐は、一生懸命考えて、事件の解決を示すことである。毎日のように配点される事件は、社会の問題集だといってもよい。当事者たちにはどうにもならなくなり、裁判官に解決してほしいと持って来られるのである。その期待に応えて正しい解決を示すには、能力と資質が必要である。最近、裁判官の仕事に魅力を感じないという修習生が増えているのは、仕事の本質が理解されてないからだろう。

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(平成18年4月)