● 弁護士任官どどいつ(3)
竹内浩史(東京高裁) 
 「ロイヤルコーツは日本で言えば東京高等裁判所」

いい夏休みだった。前後は大変だったが、ロンドンに1週間行って来た。王立裁判所(The Royal Courts of Justice)も訪ねて傍聴した。日本では高裁に相当するのだろう。イギリスの最高裁は、貴族院のようだから。民事の法廷では、両当事者の代理人弁護士(Barrister)が裁判官の方を向いて並んで弁論をしていた。小説や映画で知っていたが、全員がカツラをかぶっていた。そして法廷の壁にはぎっしりと判例集が並んでいた。なるほど不文憲法と判例法の国だ。

 「憲法典は古文書の中 法は判事の書庫にある」

 「すぐに判断してよと言うが 『すぐ』って一体 いつの事?」

それにしても、夏休みの前後は大変だった。滅多に無いはずの緊急の事件が、幸運(?)にも立て続けに私のいる部に配点されたからだ。社会的に注目を集めた仮処分の抗告事件。20分の1の確率を2回連続して引き当てた事になる。こういう緊急案件で困るのは、一体いつまでに判断してくれという事か不明瞭な点。私にとっては初めての経験で、残りの夏休みも土日も返上、寝る間も惜しんで激務をこなした。そして都々逸が生まれた。

 「みんなの夢をあきらめないで ここにもいわゆるファンがいる」


(平成16年9月)