今月の都々逸
「休み取るには 取れるのだけど その日も事件は 配られる」
裁判官の夏休み(夏期休廷)は、通例3週間である。なぜそんなに長いのかというと、これは立派な「計画年休」なのだ。本来の夏期休暇は数日だけで、あとは年休を消化して本当に休むか、宅調にして自宅で判決起案等をする。年休は20日あるが、この時期以外には取らない裁判官が多い。事件配点は機械的で、休暇中も順番を飛ばしてくれる訳ではないから、休み明けには新件が山積みになる。だからといって、飛ばすルールにすれば、遠慮してますます年休を取らなくなりそうだ。
裁判官の夏休みは、一部に宅調日を含む場合もあるので、完全に仕事をしなくていいわけではない。自宅にこもって、普段は時間を確保しにくい大事件の判決起案に費やす裁判官もいる。それでも、3週間もの夏休みをまとめて取れる職業はあまりないだろう。夏休みの期間は、7月下旬から8月末までの6週間のうち前半と後半と交替で割り当てられる例が多い。今年の私は後半組。弁護士と違って事件関係の電話からも完全に解放されるので、海外旅行に行くのも気楽だ。そこで、私の予定をもうひとつ都々逸で。
「今年の夏は アテネを観るぞ 家で判決 書きながら」
名古屋弁護士会出身の私は、もちろん中日ドラゴンズファンである。6月22日には、敵地横浜へ乗り込み、横浜弁護士会の「弁護士任官者を励ます会」に飛び入り参加した。最近、弁護士任官者を輩出して注目されているのは、横浜である。私が昨年4月に任官した以後に限っても、昨年10月に2人、今年4月に1人と合計3人もの個性派の弁護士任官者を誕生させている。全国合計でも昨年度10人と今年4月6人に過ぎない中で、東京に次ぐ2位の健闘。名古屋弁護士会も頑張ってもらわなくちゃ。そこで私が作った都々逸を。
「ここの中日-横浜戦は、1対3で負けている」
「行司の軍配 物言い付けて 協議を尽くす 控訴審」
愛知県人の私は、大相撲名古屋場所には毎年必ず足を運んでいたが、今年は東京勤務のため断念。今回は珍しく「つき手」か「かばい手」かで、同体取り直しの判定が批判を浴びた大一番があった。高裁判事の仕事は、例えると土俵下の審判だ。物言いを付け、合議を尽くし、誤判を破棄し、自判(行司差し違え)又は差戻し(取り直し)をする。そして、判断理由の場内説明で、敗者と観客の納得を得る努力も大切。微妙な勝負では、たとえ結論維持にしろ物言いをなぜ付けなかったかと批判される事もある。
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