第22条「裁判官は、労働時間規制の対象外である。したがって、自ら指定した日時に、遅刻せずに裁判所で開廷さえすれば、あとは出勤せず、自宅でいつ判決を書こうと自由だ。」
これは一般市民どころか、時には一部の裁判所職員にさえも、なかなか理解してもらえないのだが、日本の裁判官の勤務条件は、実態のみならず法律上でもこういうものになっている。特別職の国家公務員(国家公務員法2条3項13号)どころか、超のつくほど特殊な仕事である。むしろ、一人親方の請負仕事に近い。
かつて、平日の昼間にゴルフに行って世間から糾弾された裁判官がいたというが、法律上では擁護する余地も十分にある。その逆の意味で、法廷への遅刻は、たとえその原因が電車の遅れであったとしてもニュースにされてしまうといった一見理不尽な習わしも、受忍しなければならない部分があるかも知れない。
しかし、もしもこれが毎日、一般職の公務員たちと同様の出勤時刻に従うよう要求されたら、多くの裁判官は体が持たないだろう。平日も休日も記録を自宅に持ち帰り、睡眠・休息時間を削って夜間や早朝に判決を書いている裁判官も少なくないからである。
さらには、週に1日くらいは裁判所の期日を入れずに「宅調日(自宅調査日)」として、通勤時間を省略し自宅で判決起案に勤しむ方が合理的なように思われる。
もっとも、こういう仕事の仕方は、裁判官の手持ち事件が激増してくると、他人には見えない自宅における裁判官の労働時間も激増し、私生活のみならず健康をも犠牲にすることになりかねない。
むしろ、この際、個人情報保護の流れに乗って、紛失の可能性もある記録の持ち帰りは禁止し、裁判所の庁舎内での所定の勤務時間の範囲で可能な分量と内容の判決理由を書けば足りるというルールにした方が、健全かも知れない。けれども、おそらく大多数の真面目な裁判官たちは、猛反対するだろう。
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