第21条「裁判の評決は,多くの場合は全員一致になるが,評議の秘密を守るため,あくまで多数決であったという建前を貫かなければならない。死刑判決の場合も同様である。」(裁判所法75条・77条)
裁判員制度の下で,死刑求刑事件の審理・判決が続いている。
死刑判決だけは全員一致制にすべきではないかという議論が根強いが,個人的には賛成し難い。
まず,評議の秘密が大きく崩れてしまう。評決で全員が死刑に賛成したことが自動的に発表されてしまうことになるからだ。
次に,たまたま死刑絶対反対の立場を貫く人が一人でも含まれていたかという偶然で,結論が左右されることになりかねない。公平を非常に重んじる傾向の強い日本人には,これはおそらく耐えられないだろう。
さらに,全員一致制の方が一人一人の精神的負担が軽くなるという見方もあるが,そうとは限らないと思う。自分一人だけでも反対したら死刑にならなかったのに,という形で悔やむ人が出て来る可能性もあるからだ。
とはいえ,過去の死刑判決は裁判官が評議を尽くして全員一致で決めたものが多かっただろうと推測する。伝え聞くところの袴田事件のような場合は,例外中の例外ではなかろうか。しかし,評議に時間的制約もある裁判員制度の下では,本当に多数決の場合も出て来るかも知れない。
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