第20条「判決理由にどこまで書くかは、いわゆる傍論を書くかどうかも含めて、裁判官の自由だ。」
(民事訴訟法253条)
判決理由に「傍論」を書くのは、蛇足であって違法だという持論を展開している元裁判官がいる。自分の判決が「短すぎる」と批判されたのも、必要最小限の理由しか書かなかったからだなどと弁明している。
しかし、少なくとも当事者の主張に出ている限り、判決理由でどの点まで判断を示すかは、裁判官の自由裁量というべきであろう。民事訴訟法253条も、判決書には、主文、事実及び理由を記載しなければならない旨を規定しているにとどまり、論理的に必要最小限の理由しか書いてはいけないなどと限定はしていない。そして、判決理由の重要な機能の一つは、敗者の説得である。一見「傍論」ではないかと思われる点の判断を示した裁判官も、そうした方が主文の説得力が増すと考えたからだろう。
そもそも、何が「傍論」であるかは、それほど自明ではない。一つの結論を論証する道筋は一つとは限らないから。それは、数学で一つの定理を証明する方法が何通りも存在するのと同様である。例えば、請求を棄却する判決でも、請求原因を排斥するか、抗弁を容れるか、どちらの選択肢も可能な事案もある。
ただし、できることならば、判決理由も短くてエレガントな方が美しい。これも、定理の証明と同様である。
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