第19条「刑事裁判の判決の宣告後の訓戒は、無罪判決の場合もすることができる。また、裁判長の自戒も含むことができる。」(刑事訴訟規則221条)
同条は「裁判長は、判決の宣言をした後、被告人に対し、その将来について適当な訓戒をすることができる。」と規定している。
民事裁判と異なり、刑事裁判では必ず当事者本人が判決期日に出廷している上に、このような規定もあるので、長嶺超輝さんのベストセラーに収録されたような数々の裁判長の名言が生まれている。
訓戒は裁判長の権限だが、合議事件では予め陪席裁判官や裁判員の意見を聴いて言葉を練る例も少なくないようだ。
そして注目されるのは、規定の文言上、有罪判決の場合だけに限定されてはいない点。
実際、無罪判決の宣告後に、今後は疑われるような軽率な言動を慎しんでほしい旨を訓戒した裁判官もいらっしゃった。
他方では、かつて有名な冤罪事件で、証拠不十分のため無罪にするけれども、捜査官の労苦に思いを致すと忍びない旨を述べた裁判長もいた。これはどう見ても「訓戒」の範囲を逸脱しているだろう。ちなみに、この元裁判長は、裁判員制度反対の先頭に立っている。
最近感心したのは、足利事件の再審無罪判決での訓戒。
裁判長の自戒という形で、菅家さんへの謝罪を実現した。
これには他の裁判官から批判もあるのだが、この規定を根拠にしたギリギリの工夫で、鳥越俊太郎さんの「裁判官も謝罪すべきだ」という意見に代表される世論との折り合いをつけたという点で、名裁きだったように思う。この規定を意識して一言一句を練り上げた訓戒であったことが窺い知れるので、新聞にも掲載された全文を再読してほしい。
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