● 悪魔の法典(12)
チェックメイト 
第12条「裁判員制度の下では、判事補も、裁判員の過半数を味方にすれば、裁判長と相陪席の判事を評決で負かすことができる。」(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律67条)

 私が裁判員制度の評議で最も期待しているのは、実はこの点である。
 もし仮に、あの「袴田事件」が裁判員制度で裁かれていたら、どうなっただろうか。
 熊本判事補は裁判員の過半数(4ないし6人)を味方につけて論陣を張り、無罪判決の起案を通すことができたかも知れない。少なくとも、あんなに悩むことは無かったのではないか。
 ただし、これと逆のケースもあり得ることに留意したい。
 裁判官3人全員が無罪意見で、裁判員6人の過半数が有罪意見だった場合、法の規定では無罪となる。しかし、裁判官のうち1人が意見を変えれば、有罪にして死刑判決をすることも可能である。

(平成21年6月)